ウーロン茶に騙されている。

梅花藻

ウーロン茶の瞞着

ウーロン茶は中国からの留学生であり、優等生として知られている。あまり効用などには明るくないので紹介はできないのであるが、何やら健康によさそうな印象とすっきりした飲み口で食卓の人気者であることに疑いはない。ウーロン茶は大いに親しまれ、日本人のお腹に収まっている。


そのウーロン茶に捜査令状を出したものがいる。この私である。


非常に明るく社交的な人だと思って長らく懇意にしていたところ実は熱心な宗教家であり勧誘担当者であったということはさして珍しくもない。私なぞは今までの人生で三度こういった事態に巻き込まれており、それ以来明るすぎる人には自然と警戒心を抱くようになった。


今回、ウーロン茶の場合も同じである。どうも彼(?)は明るすぎるきらいがある。私が行く先々に現れ、爽やかに挨拶をしてくる。私も悪い気がしないので彼を手に取って出掛けること数百回では収まらなかったのであるが、かつての経験が私の目を覚まさせた。今までは人に誑かされてきたのであったが今度は茶。気付くのに20年以上を要したのは、生まれながらにウーロン茶があまりにも上手く人々の懐に入り込んでいたためである。


如上の経緯を読んで、私の頭がおかしいと感じる人もいるかもしれない。しかし以下を読んでいただければ恐らく納得されるはずであると信じている。ウーロン茶の欺瞞、瞞着が少しでも詳らかになることを祈る。



世に飲み物は数あれど、どこにでもあり、且つどこにでも売られているのはウーロン茶のみであると言っていい。ここがウーロン茶の恐ろしいところである。例えば水はどこにでもあるが売られているばかりではない。公園に行けば飲める。ウーロン茶は水道から出てこない。


ウーロン茶の場合、勝手に出てくることはない。教師は家庭訪問をした時、各家庭で1杯ずつ麦茶を飲むというし、緑茶だって静岡県の小学校では水道から出てくるという話もある。ただウーロン茶の場合は別で、スーパー、居酒屋、喫茶店、映画館までウーロン茶は無料で振る舞われることもなく必ず「売られて」いるのである。たとえば居酒屋に行って酔い覚ましのお茶を頼もうとメニューを開いたときに


「麦茶 290円」


の文字が目に入ったらあなたは恐らく頼むまい。更にたとえば映画館に行ったとき、


「緑茶M 450円」


と書いてあったら私は踵を返してDVDのレンタル開始をじっと待つであろう(そうかな)


段々とウーロン茶が怪しく見えてきた頃合だろう。確かにそういえば、なんでこいつだけ金を取ってるんだ。麦茶の方が旨くて好きなのに。そんな風に考え出したのではあるまいか。私は更に弾劾を進める。


そもそもウーロン茶とは何か。麦茶は自分の出自をいきなり詳らかにしているし、緑茶だって紅茶だって自分の特徴を精いっぱい伝えようとしているではないか。翻ってウーロン茶(烏龍茶)からは「とりあえず着飾っておこう」「カラスにドラゴン、これはカッコいいぞ」という思春期的な発露が見受けられる。実がないのである。私は断罪者としてこれから調べ、扱き下ろしてやろうと思うのである。


「烏龍茶は、中国茶のうち青茶に分類され、茶葉の発酵途中で加熱することで発酵を止めた、半発酵茶である(wikipediaより)」


ちょっとよくわからない。何か大事な部分をはぐらかされている印象を受ける。こんなやり取りを最近都議会で見たような気がする。因みに麦茶はというと、


「麦茶は、搗精し焙煎した大麦の種子を煎じて作った飲料である。」

と至極わかりやすい。「搗精」がよく分からないが何となく焙煎する前の下処理、ということで決着を付けられるように思える。


ウーロン茶は「中国茶のうち青茶に分類され」とまず自分が中国茶に分類されることを声高に叫ぶ。バックには中国がついているんだぞ、ということを喧伝している。自分の所属を最初に自慢する奴は大抵碌なやつではない。


続いて「茶葉の発酵途中で加熱することで発酵を止めた、半発酵茶である」と言う。ここが核であるというのに理解が及ばない。非常に口惜しい。おそらくわざと答弁を回りくどくしてのらりくらりと躱しているのであり、まったく見下げ果てたやつである。ただし切れ者のウーロン茶も1つ大きなミスを犯しており、私はそれを見逃さなかった。それは「半発酵茶」と名乗ったことである。これなら我々にも分かりやすい。半発酵茶がある、ということは「全発酵茶」や「無発酵茶」があるということである。調べていないがあるに違いない。あってほしい。つまりウーロン茶は自ら半端者であると暴露してしまっている。


言質は取れた(よく分からない)。半端者とはいえ、向こうにはバックに中国がついているから迂闊に手は出せなくなってしまった。どうにも話題が政治の方に向かいそうで恐ろしいがここまで来たら最後まで言い切るしかあるまい。


ここまでの調べでウーロン茶は、どこででも値を付けられる人気者であるがその実、自らを飾り立て、自分の所属を盾にしながら大事な質問には答えぬ半端者であるということが白日の下にさらされたのである。その点麦茶はといえば、無償で教師の喉を潤し、自分は田舎者ッスと言い、謙虚な心を持つ清廉潔白な青年であるとわかる。


ウーロン茶を弾劾するはずがどうにも麦茶を称える文章になってしまい大変恐縮なのであるが、私はあくまで公正な立場でウーロン茶を批判していることをわかってもらうため最後にウーロン茶の取るべき善後策を披露したい。それは後進の育成である。


名選手が名将になるとは限らず、名横綱が名親方になるとは限らないがウーロン茶の圧倒的ネームバリューを生かして麦茶と一緒に居酒屋へ地方営業にいくなどして地道に彼の一強状態を瓦解させていくしかイメージアップの道はない。いきなり営業にいくと驚かれるだろうから、まずは喉が締まりやすくなると意外に不評なカラオケのドリンクバー辺りから世代交代を始めてはどうだろうか。

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