第11話 中央舞台(メインステージ)の歌姫(ディーバ)
「なーんかさ。
コノ、
お
それにもう、コレって彼女たちの
そこにわたしというか、みんなからしたら、
わたしは、わたしだし、〈
なんか、ふくざつ~~~」
「
まだ
「ええ。
さっきからやってますけど。
いまのところは。
あとは、ステージ
なんたって、全席に対していちばん見通しがイイのはあそこなんだから!」
前のステージが終わり、〈
可能な限り、〈
「大丈夫か?」とさっき
「誰に言っちゃってんのよ?」とどやされたから、たぶん、大丈夫なのだろう。
ここからは〈俺〉には未知の世界。
〈
前のステージが終わり、〈俺〉たちの前を少女が通り過ぎて行った。
表情がカタイ。
マイクを
強く
まるで、
そうか。
この少女、ひとさわぎあったときステージでしゃがみ込んでいた……。
「気づいた?
さすが〈
そうよ。
あの
相変わらず、
まあ、あんなことがあったら無理もないか……。
でも、そんなんじゃあ。
まわりは、安心して
〈俺〉は〈
「でも、やっぱり、自分の身は自分で
いくらでも
けど、いつも誰か
突然ってこともあるし。
けっきょく、なんかあってイチバン困るのジブンだし。
大事な人にはさ。
悲しんでもらいたくないじゃん……」
「ああ。
そうだな。
〈俺〉もその考えに
いくら
「ってゆーか、しょっぱなは
アンタが歌わなくってどーすんのよ?!」
ここで本来なら、いまステージで棒立ちの少女が歌っているハズだった楽曲。
それに合わせて、〈
そして、サプライズ&パフォーマンスという手はずなのだが……。
どうするのだコレは?
このまま、
観客も不自然なステージに気がついて、ざわつきはじめている。
そのとき、〈
「どうする気だ?」
「決まってんでしょ。
歌うのよ!」
「誰が?」
「わたしがっ!!」
〈
〈俺〉は〈
〈
本来は、〈
それだけで、しまいだったのだ。
「大丈夫なのか?
「まかせてよ。
むかしっから、本番にはすんごく強いんだから!
それにさ。
こう見えてもわたし。
『ようせいの歌声』って言われてたのよ」
「妖精か。
それはさぞかし……」
「
だけど(笑)」
「……」
「〈
ちゃんと見ててね」
そう言うと、〈
そして、舞台中央、棒立ちの少女に近づいて行く。
「しつれい。
ちょっとだけ……。
あなたの
少女は〈
そこで少女のマネージャーたちが、肩を抱きかかえるようにして連れて行った。
流れていた音楽が止まった。
スポットライトが〈
すると、不思議なことに衣装を応急処置した
どうやら、
「
〈俺〉のかたわらに来て、親指を立てながら
「放送だけでいいなら、CG合成できるけど……。
それだと、会場の目はごまかせないっスから」
そして、彼女が
「ふたりの
いつもおたがい
それでもふたり そばにいなきゃいけなかったのは
きっと それが
会場がいっしゅんざわめいた。
「へー、この
バラードもイイじゃん。
しかし、アカペラとはオツだなあ」
「何言ってんのよ。
ちがうわよ!
だって、あの
「えっ!
あ、そうか!?
でも、じゃあ、アレって?」
「そっくり。
まるで生き写しね……」
観客は
次第に、〈
「わたしの
あなたは『泣かなかった』って聞いた……」
〈俺〉は「大したもんだな」と思う。
観客の心をつかんでしまった。
たったひとつの歌で。
『〈
空気中に
ステージ方向から見て2列目・中央。
うーん。
爆弾うんぬんの前に、フツーに怪しいんですけど。
映像を送ります』
〈俺〉は、小型携帯端末の液晶モニタを見る。
〈
どう見ても、パフォーマンスを楽しんでいるようには見えない。
「
〈
『ええ。
受信状態良好』
「爆発物処理班を呼んでくれ。
“氷づけ”にしよう。
『了解。
手配します』
その間も、ずっと〈
〈俺〉は歌いながら、会場を
おそらく、サポートシステムも
〈
「でもね わたしだけは
あなたの ながす涙 もう
あなたの 奥の深いところにある
おだやかで あったかいもの
いまは それが とても なつかしいから……」
(切なさ? 悲しみ? 苦しみ? うううん。
言葉になんてならないよ……。
言葉になんてとてもできないよっ!!)
〈俺〉には、〈
だが、それに
少なくともいまは。
〈俺〉はステージ
そこで、
「〈
これを!」
「来てくれて助かった。
急ごう!」
〈俺〉は、
「
〈俺〉が合図したら、照明を落としてくれ。
スポットライトも非常灯もだ。
『了解……。
合図を待ちます。
〈俺〉は、
2列目観客の視線に入らないように、後部に回り込む。
いた!
周囲の観客は手を振ったり、身体を左右に
それなのに、ぶつかってくる左右の観客を迷惑そうに……。
ただ
服装も見るからにこの国の若者と異なっているので、見間違えようもない。
〈俺〉は爆弾処理班の兵士にうなずくと、通路を近づいて行く。
「失礼」
「すまない」
〈俺〉たちは、人並みを
〈俺〉は、“
兵士はうなずいた。
「よし。
いまだ。
照明を落とせ」
『了解』
照明が落ち、ホールを暗闇が支配する。
〈俺〉は、
〈
「わー」っという歓声が聞こえる。
そのとき、
右手には何か
カンベンしてくれ!
完全に自分に
〈俺〉は
たまらず、男は
〈俺〉は折れたかもしれないな……と思う。
すかさず、男は頭から“
ボンベの中身は液体窒素だ。
ただでは済まないだろうが、運次第といったところか。
話しによれば-200度近くなるそうだが、短時間なら死なずに済むかもしれない。
死んだほうがマシだった、と思うような状態になるかもしれないし……。
もたもたしていると、窒素ばかりになって窒息するかもしれないが。
どのみち人生終了予定だったようだから、文句を言われる筋合いはないだろう。
彼自信が取ったリスクによる結果でもあるし……。
〈俺〉たちは、
〈俺〉は〈
「OKもういいぞ。
『了解。
照明点灯』
「〈
見事なお
「
「あとは我々が……。
早く外へ。
駐車場で処理する」
爆発物処理班は緊張した
あとは
会場では誰も気がつかなかったということはないだろうが……。
どうやら、最小限の影響で済んだようだ。
暗闇で”知り合いでもない不審な男”が消えたこと。
それよりも、”ステージ上の
彼らには、もっとインパクトがあったようだし。
『ところで……。
〈
「通路にいる」
『お取り込み中だとは思うんだけど……。
来てもらったりはできないよね?』
「どうした?」
『調子にのって、出力を上げ過ぎちゃった。
〈
「
こっちは片付いた。
すぐ行く」
『うん』
いつになく、
「心配ない。
〈俺〉にまかせておけ!」
『うん』
ステージ
「ただ わたしは ここにいるよって
ホントは そばにいるんだよって
それだけは伝えたいの
そして いちどもいえなかった言葉を
あなたに……」
ステージの
そして、そのとき〈
〈
〈二脚〉のバッテリの電圧が下がってしまえば、もちろんサポートシステムだって
〈俺〉は、
そして、〈
なんとか、
「もう大丈夫だ。
よくやった」
『〈
ちゃんと
「ああ。
もちろん。
『よかったあ』
「でも、〈俺〉にウソをついたな?」
『うん』
「ぶっつけ本番じゃないだろ?!」
『うん』
「用意してたんだな?」
『うん』
「よかった。
すごくよかったよ」
『うん』
〈
万が一、
『〈
コレが最初で最後だと思うから……。
どうしても
〈
〈俺〉は〈
「今度、
さっきは、
確かに、こんな
それでも……。
『うん。
そ、だね!』
〈俺〉は〈
『ごめん。
重いっしょ……』
足場がしっかりしていて、
「なに、こちとらまだまだ、現役だ。
支えられない重さじゃない!」
〈俺〉の大事な“娘”だしな。
〈俺〉は〈
「あ、あの……」
「なんでしょう?
申し訳ないが、このとおり、ちょっといまは……。
手が離せない」
見知らぬ女性だった。
〈
「あなたは、そのロボットの会社の方?」
「ええ。
まあ。
失礼ですが、あなたは?」
「あ、私はこの
「!」
「いまのロボットってすごいのねえ。
最初はイヤだったの。
我が
でも、さっき
私には、ハッキリと娘の
まるで、生き
そう言うと〈
そして、そのまま顔を近づけると〈
「とてもいい
あの
きっと」
〈
『お母さん……』
〈
「あ……。
お母さん!」
〈俺〉は、〈
いくら肉親とはいえ、いま以上の情報を
どうしようもないのは
「この
「お約束します。
いままでも、これからも」
「そうそう。
衣装も。
すごく似合ってるわ。
夢に見たとおり」
「あなたにそう言ってもらえて……。
〈
きっと」
〈
どこか
「おい。
大丈夫か?」
『……』
「すまない。
『いまバッテリが切れてるから。
それに元々、涙を流す機能は付いてないんだってば……』
「そうだったな」
『“これからも、あの
さっきお母さんが……』
「そうか。
よかったな」
『うん。
でもさっ!!』
それから〈
今日、一日、我慢に我慢していたモノがついに爆発してしまったのだろう。
無理もない。
『なんなのよ!
なんでよってたかって、次から次へと!!
わたしを泣かしに来るのよ!!!
わたしは『陽性の
お涙ちょうだいみたいな筋書きは大嫌いなの!!
冗談じゃないわよ。
もう!』
「通信はほどほどにな。
バッテリ残量を考えて……」
『誰に言っちゃってんのよ!
そんなのわかってんのよ!
なんなのよ!
なんでよってたかって……』
きっと〈
〈俺〉は甘んじて受け入れた。
これは〈
「カンベンしてくれ!」なんて、口が
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