第7話 再会の控え室(メモリールーム)
「ここで待ってる」
〈俺〉は〈
〈
トビラは薄く、開けておいた。
『衣装さん……?』
「なぜかしらね……。
話を聞いたときはね。
『(ふ)ざけんな!』って。
そう思ったわよ。
あの
ロボットに着せろ、だなんて
でも、ね。
あなたを見たとき……」
スタイリストは〈
「……」
「きっと。
あの
うううん。
きっと……。
きっと、喜んでくれると思う。
そう思ったの。
なんでだろ?
なんで、そう思うんだろ?
不思議なんだよね」
スタイリストは、
「さあ、早くこっちへ。
スタイリストが、テキパキと合わせはじめた。
〈彼女〉のものだったハズの衣装を。
いまは〈
「はい。
これで出来上がり!
この衣装をね。
あの
大人っぽいでしょ?
〈
スタイリストは〈
しみじみと……。
「まさかね。
ピッタリじゃない。
なんだか、またジーンとしてきちゃった」
スタイリストは〈
そして、静かに〈
「『おかえり』
この言葉の意味。
〈
それでもイイの。
言わせてもらうわ。
『おかえりなさい』」
ギ・ギと〈
そして……。
「アリ・ガトウ・ゴザイ・マス。
ガン・バリ・マス」
ワザとらしい、合成音声が
〈俺〉は〈
そんな、本来はあり
再会
見守ることしかできなかった。
そして、〈
「〈
どうかな?
ちょっと、
これをほかの兵隊に言われたのなら……。
「任務中に何を言ってやがる!」
と、尻を
だが、〈俺〉もそんなにヤボじゃない。
「そうか?
よく似合ってるよ」
「もしかして、見えちゃったりしてないかな?
「大丈夫だ。
よほど近くまで行かなければな」
「ホントに!?
よかったあ」
「それより、大丈夫か?」
「なにが?」
「まあいい」
〈
〈俺〉は、その
以前、出演したことのある
だから「施設の構造は把握している」のだ、と。
だが、前に来たときは生身だったハズ。
それに、同じ
〈俺〉は「
〈
〈俺〉はとっさに、バランスを
そのとき、〈
「う!」
「う?」
「う、腕がちぎれる!」
「あ、いけね」
「
「ごめーん〈
〈
生身感覚でっ。
〈
でも、
ちょっとシツレイじゃない?」
「いいことかもな」
〈俺〉は自分の腕に
「え?
イタいのが!?
ちょっと、しょっくかも~~~。
〈
「そうじゃない!
機械の
『忘れてる』ってことだ。
それだけ、〈
「そ、そうかな?」
「そうだろ。
なんだかんだ言っても……。
〈
「そうかも……。
感謝しなきゃいけないんだよね。
みんなに」
そんなことを言い合っていると、声をかけられた。
「すいません。
ちょっといいですか?」
見知らぬ若者だ。
「なにか?」
「このロボットを制作した会社の方ですよね?
オレこういうの興味があって……。
ちょっとだけ、近くで見せてもらってもいいですか?」
「ああ。
短時間だったらかまわないよ。
その……。
いろいろと
〈俺〉と〈
その
「立て込んでるところに……。
お願いしてしまって。
えっ!?」
若者が息をのむのが聞こえた。
「あ、すいません。
ある
ビックリして。
あごのラインなんかホントそっくりだ……。
すごいんですね。
いまの技術って。
ホントに
「……」
「おい。
どうした?
普通に会話もできるんだが……。
おかしいな」
〈俺〉は、
まるで、電源が落ちてしまったかのようだ。
『〈
まさか、
「どうした?」
『ちょっと
「通信が入った。
ちょっと、失礼する」
〈俺〉は、
そして、その場を離れて
『これでいいか?』
『
『なに?』
『〈元カレ〉だっつーのっ!!』
『なんだとっ!?』
なんでまた。
そんな、
あ……。
だが……。
まてよ!?
〈俺〉は
娘に会ったとき、アイドルの誰々と俳優の
そういうことなら……。
この場に来ていても、おかしくはない。
〈俺〉はすぐに〈
「そろそろいいかな。
「あ、すいません。
ありがとうございました」
「キミも出演するのかい?」
「ええ。
おかげさまでここのところは……。
毎シーズン、呼んでもらってます」
「そうか。
じゃあ、またあとで」
「はい」
〈俺〉は、さっきから
「さあ、行くぞ」
突然、生き返ったかのように、〈
そして〈俺〉の顔を見た。
次に
きっと、〈
〈元カレ〉に、
「あ、あの!」
ビクッと不自然に〈
「なんだね?」
「あとでまた、その〈
〈俺〉は、自身が「またあとで」と言ってしまったことを
ちょっとだけだが……。
でも、だからといってこの場合。
「じゃあ、
「どうかな。
「そうですか……」
〈俺〉は、〈元カレ〉とかいうのに
そして、〈
「〈
わたし、もう……。
今日、使いモノにならないかも……」
「……」
「だって、だってよ。
気持ち的には
〈俺〉は、こういうとき
いや、言い方が正確でなかった。
正確に言うと、そんなことができるほど
「いや……。
〈俺〉には
すまない」
自分の気持ちのまま、言葉をつなぐ。
「〈
やっかいな〈
『
お決まりのセリフが言えないワケよっ!!
〈
「確かにな。
かける言葉が見つからない。
すまない……」
「でも、なんで!
なんで、わたしバッカリこんな目にあわなきゃならないの?!
酷過ぎるよ、〈
あ~、もう
〈俺〉はかのじょの
しかし、〈
その最後のフレーズだけは、
「
だが、ちょっと待ってくれ。
『最悪』だなんて。
軽々しく口にしちゃあいけないよ。
たしかに〈
でも、それが『最悪』?
じゃあないだろ?」
〈俺〉の
〈俺〉は、数々の戦場。
絶望的だったり、壊滅的だったりした……。
それを思い浮かべていた。
そして。
あのとき。
〈
「行ってください!」と
〈
「……」
「……」
〈
「そうかも……。
もう、私にとっての『
たぶん」
〈
自分が病気と
〈
そんなことを思ったのだろう。
〈俺〉は、追い
〈
〈
〈
「いまは、そんな気持ちは
あとでいろいろ考えるのは勝手だ。
だが、いまは意思の力で
いつでもできる」
〈俺〉を見つめる、〈
それが、ズームしてまた元の倍率に戻った。
〈俺〉は、視線を〈
「じゃあ、ねぇ~」
『も~、
これで手を打っとくわ」
気のせいだろうか。
そのとき、〈
「そっかー。
これ以上、ワルくなりようがないもんねえ。
もうこうなりゃヤケクソよ!!
ねぇ、〈
「や、その。
あと、もう少し、お
〈俺〉は〈
〈俺〉は「娘のところへ、必ず
「でも、よかった。
〈元カレ〉って
〈俺〉は、リアクションに困る。
〈
「でもなあ……」
「なんだ、まだ、何かあるのか?
何かあるなら、いまのうちだぞ」
〈俺〉は、そう言って
何か起こるなら、本番中より、いまのほうがいいのは確かだ。
「〈
わたしはステージ側の人間よ?
ちょっと、ステージに突っ立ってオシマイ……。
それで、あとはずーっと
わたし、観客にはならない!」
「
観客だなんて、
観客の命が〈
子供だって
「そんなの……。
わかってるよ。
わかってるけど……。
なんだか自分の気持ちがよくわかんないのよ。
このまま
「〈
〈
その後の訓練だって、十分にこなした。
大丈夫!
実戦経験豊富、
もっともっともっともっと、自分を信じていいんだ!!」
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