第3話 研究所(ラボ)中庭(コートヤード)の散策
「なんだこれは?」
「白衣です」
「それは見れば
「きっと……。
お似合いですよ」
〈俺〉は、〈
「俺が医者に見えるか?」
「いえ」
〈俺〉は〈
「俺が研究者に見えるか?」
「いいえ(笑)」
「だろうな」
〈俺〉は肩をすくめながら、〈
「初めまして」ではないしな……。
なんと声をかけたものか迷ったので、冗談めかした言い方になった。
「お待たせしました、お姫様。
舞踏会に遅刻してしまうかな?
〈俺〉は、〈
「いーえ。
王子様にお会いできて
〈俺〉は、白衣のボタンを
「ありがとう。
まだ、指先の制御に
ゆっくり歩いて行く〈
その後に続いて……。
〈俺〉も、
「別に……。
〈俺〉とじゃなくてもよかったろ?」
白衣の背中と腕に、突っ張る感じがある。
どうにも気になる。
動きづらい。
これが、いちばん大きいサイズらしいのだが。
「うううん。
〈
それに……。
〈
今度は〈
「確かにな。
〈
エスコートしているツモリだったが……。
いつの間にか逆になってたかもな」
〈俺〉は自然に会話できてるな……と思う。
まあ、〈
”兵士”には戦場で苦楽をともにしたもの同士にしか解らない、“間合い”というものがあるものだ。
「それにさ……」
「ん?」
「わたしは病人?」
「……」
「ちがうでしょ?
「そうだな。
〈
〈俺〉が保証する。
病人は、
絶対にな」
「ヤメてよ~(苦笑)。
あれは必死だったの!」
「いや、
「えー。
何それ~」
「あのときの判断は正しかった。
感謝してる。
〈
きっと、あの地で
「……」
「本当にありがとう」
「うん」
「もっと早くに言っておくべき言葉だった。
すまない。
伝えるのが遅くなってしまった」
「うううん。
いいよ、そんなの……。
娘さんには会った?」
「まだだ」
「そっか」
「なに、すぐ会えるさ」
「そっか」
「ああ」
「えっと、それで……。
わたしが病人じゃないならさ。
だったら。
お医者さんとか看護師さんのさ。
付き添いはいらないよね。
そう思わない?」
「そうか。
それも、そうだな」
「それに……」
「ん?」
「わたしの〈
それって〈
「なんのことだ?」
「え~。
言ってくれたじゃないですかー!?」
「そうだったか?」
「言いましたー!!
〈某国〉海岸付近の海上。
座標XXX : YYY地点。
YYYY年MM月DD日のXXXX時XX秒にっ!!」
「
〈
「それなら、よろしい(笑)」
「それより、どうなんだ〈
「いいよ……。
いいと思うんだけど。
やっぱ、〈
よくぞまあ、
「……」
「でもさ。
〈
「何を?」
「
「なぜ?」
「カッコワルかったでしょ?」
「訓練にカッコイイもワルイもないさ(笑)」
「そうかな?」
「ああ。
そんなこと言ってたら……。
〈俺〉が兵隊になったときの訓練なんざ、見られたもんじゃなかったぞ!」
〈俺〉は、
それも「虫けら」は、呼ばれ方として、まだ上品なものだったことを。
「〈
そうなの?」
「そんなもんさ。
みんな、最初は」
「なら、よかった。
でも、ちょっと、思い出しちゃったな」
「なにをだ?」
「昔さ。
わたし、ダンスとかもしてたからさ。
いっぱい練習してたよ。
そういえば」
「そうか……」
「うん。
やっぱりさ。
最初はさ。
ぜんぜん、思いどおりになんか動けないからさ。
やっぱり、カッコワルイよね。
でも……」
「でも?」
「そんなの気にならなかったよ!
だって……。
できなきゃさ。
できるまで練習してさ。
できるようになってたもん」
「
「うん。
あの頃はさ。
なんでも
『がんばればなんとかなる!』って。
ホンキでそう思ってた。
けっきょくは、さ。
どうにもなんなくって。
〈
「……」
「アタマではね。
わかってるツモリだよ。
まあ、いまじゃあ〈
しかし、〈俺〉には痛いほど
その
なぜなら、〈俺〉にも経験があるからだ。
〈
指揮官として、完璧であろうとした日々。
そして、いつしかそれは〈
“英雄”を演じる日々へと変わった。
「これでもさ。
受け入れようとしてんのよ。
でも……。
受け入れることなんかできない!
すべてを受け入れることなんかできないよっ!!」
だが、人はいつかすべて受け入れる。
人にはその
でなければ……。
「でも、必要なことなんだよね?
だから、受け入れることにする。
ちょっとずつだけど……。
それでイイんだよね?
〈
「ああ。
もう〈
ジャブジャブ、
誰も〈
少なくとも〈俺〉は
「〈
そんな顔しないでよ。
って、そんな顔をさせちゃったのは……。
わたしか」
「〈
ほかのことも思い出してた」
「そっか……」
「お互い悩みは
なんて、
怒られるな。
すまない」
「ううん。
あやまんないでよ。
なんだかさ。
〈
最近、楽しめてきてるんだよ!」
「あまり、その……。
気を
〈俺〉とふたりのときは、
「いやいやいや。
ホント、強がりとかじゃないですってば。
前はさ。
なんでわたしにだけ……。
『こんなヒドイことばっか』って思ってた。
でも、気づいたんだ。
神サマはさ。
わたしから、すべては
いまはそう思ってるの」
「すべて、は……?」
「そ。
残してくれたんだ。
神サマはさ。
あたしの
わたしさ。
ホント、死にたくない。
それだけはイヤだって思った。
そしたらね。
よくいうじゃない?
『
まさにアレ、ね」
〈俺〉は思わず見つめた。
感情の読み取れない……。
〈
「なんだか不思議な感じ。
わたし〈
練習、練習、また練習……。
まさかよね?」
「……」
「でもさ。
ネットとリンクしほうだい。
バックアップコンピュータ使いほうだい。
〈
バッテリが切れるまで使いほうだい……。
この
生身のときにあったらよかったのに……。
なーんて。
そう思っちゃわない?
『アイドルやりながら、勉学も両立させてまーす(はーと)』
なんてさ。
いうほどラクじゃあないのよね」
〈
そんな〈
笑顔を返していいのか
だから、
まあ、いつものことだ。
そして、〈俺〉は……。
それが
そんなところを思い浮かべる。
あながち「『ない』とは言い切れない未来だな」などと思う。
そして、自分の想像を「
しかし、
それに、確信が持てない自分がいることに気づく。
「〈王子様〉と〈お姫様〉?
そろそろ、
〈
耳の超小型通信機からだ。
「えー。
もーちょっと〈
「後で時間があったらね。
〈
「は~い」
不服そうなニュアンスがないとは言えない。
でも、〈
そして、〈二脚〉の足でゆっくりと歩きはじめた。
きっと、〈
〈
〈
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