第13話 “ガッカリ”飲み屋(バー)「地の果て」
やっと
そして、〈俺〉は今日、〈
だが、これも訓練のうちとして、各種データを収集することを条件に〈
確かに、
これからも、この前のようにライブ
ならば、〈
〈
それにだって、様々な場面に
それに何より、〈
「ちょっと〈
ここがとっておきなの?」
「もちろん」
「超高層階のラウンジとかさー。
そーいうの期待しちゃった。
ちょっとガッカリかも~」
〈
「でもさ。
〈
『とっておきの場所だぞ!』なんて……。
自分でハードル上げちゃってさ~」
「超高層もワルくないだろうがな。
高けりゃいいってもんでもないさ。
マスター。
例の
「もちろんさ。
〈
ごゆっくり。
お
そっちでガッカリしておいで(笑)」
初老のマスターが、テーブルに置いたカクテルグラス。
それには、アナログキーがひとつ入っていた。
「聞こえちゃいました?
ごめんなさい」
マスターは、何も言わずに笑った。
「ついておいで」
〈俺〉は、そう言うと非常口をくぐった。
そして、その先にある出口のドア。
避難経路とは違うそれに、アナログキーを差し込んだ。
「わー。
何コレ!!
ちょっとスゴくなーい!?」
眼下、眼前、手に届くような光の
〈
「遠くが
だが、これぐらいの高さのほうが……。
人の
ビルの照明の
ここがちょうど、この街の超高層ビル
この風景が気に入って、この
彼が命名したバーの名は「The End of the Earth(地の果て)」。
まあ、みんな「EoE」と
「キレイ」
「内緒だぞ……。
〈
娘にも」
「えっ?
なんで!?」
「まだ、ふたりとも……。
連れて来たことがないんだ」
「〈
いまのセリフかなりグッときた!
もー、泣かすつもりっしょ。
まあ、〈
って、このネタ使い過ぎか(笑)。
もっとなんか考えなきゃね……」
「そうだな。
最近の
「でも、あたしだけ連れて来てくれて……。
ホント、ありがとう!」
「
〈
「〈
ちょっと
「ん?」
「わたし、この前っていうか。
その前もかもしれないけど……。
感情がブレブレじゃん?」
「……」
「なんで〈
いつもそうやって自信満々でいられるの?
悩みとかないってカンジじゃん」
「そんなワケないさ……。
そんなワケないだろ」
「そーお~?」
「もし、戦場で
普段は
それだけだ」
「……」
「不安、心配、取り越し苦労……。
そんなのばっかりさ。
議会の連中、
この国の
「ス、スケールでっかいね(笑)」
「そうか?
〈
〈俺〉は
「それからな。
不安、心配、
みんなあって
それのおかげで、
どれも優秀は兵士、いや、人間が生きる上で必要なものだ。
おい?
聞いているのか?」
〈俺〉はなんとなく、〈
「うーん。
だから。
たぶん。
やっぱり。
よくもわるくも〈
きっと」
「……」
「〈
そんなのに関係なくね」
〈
そして、さっきまで
「わたし、〈
ちょっとわかった気がするんです。
強そうな……。
ときにはこわそうな人もいるけど(笑)。
軍人さんが、子どもみたいな
『〈
声をかけてきたり、
あの気持ちが……」
「……」
「本当はわたし。
〈
〈
「それは申し訳なかったな(笑)。
普通の男でさぞかし……。
「うううん。
〈
もっと、もっとスゴイ人だった。
最初の出撃のとき、わたし人を撃つ気でした。
人を殺す気でした。
それが〈
思い込もうとしてた。
機械になりきろうとしてた。
演じきろうとしてた。
でも、〈
命令すればいつでもできたのに……。
いまなら、わたしにもわかる。
〈
『〈
って言った言葉の意味。
〈
あと……」
〈
こういうときは、何か
あるいは、何か通信しているとき。
さらには、何かデータベースを検索しているときだ。
〈俺〉も、だいぶこの〈
「前の奥様とは……。
YYYY年MM月DD日、XXXX時XX秒に離婚が成立していますよね?
ええ。
そうです。
いま役所のデータベースを検索しました」
「おいおい、アクセス権はどうした?
まさか?!
また、
もうカンベンしてくれ!!」
〈
「わたし、〈
まあ、〈
いや、でも、まてよ?
〈
〈
これっぽっちも思ってないことは、冗談でも言いませんからね。
だって、そこをハズしちゃったら……。
わたしの
「……」
「〈
もしもね?
もしもよ?
わたしが……。
普通の女の子だった頃に
そしたら……。
好きになってくれましたか?」
〈俺〉はたぶん、愛の告白などではなく……。
そう。
〈
その〈
〈
幼い頃に両親は離婚。
母親に育てられ……。
「わたしってアイドルになってから。
『好きだ』『好きだ』っていっぱい言われた。
でも、誰かにホントに愛されてたのかわからない。
実感がないんだよね。
アイドルってみんなに愛されてるって思う?
みんながさ、好きだっていうのは『アイドル』でさ。
『わたしのはことはどうなの?』って。
女の子として、男の人にってだけでなくて……。
お母さんにもさ。
わたし愛してもらえてたのかな?
お父さんのことはよく覚えてないけど。
お母さんは厳しかったし。
でも、それはしょうがなかったのかな……とも思ったりする。
お母さんは、わたしに厳しかったけど……。
自分にはもっと厳しい
〈
〈俺〉にも経験がある。
生きるのに精一杯だったあの頃は、何も感じていなかった。
何も感じる余裕がなかった。
でも、いま成人してから、ふとした瞬間に訪れる感情。
あの
「〈元カレ〉にしてみたって。
アイドルと付き合ってるって、ステイタスがほしかったんじゃないかって。
『そうじゃないんだ』って、自分には言い聞かせてたけど。
そもそも、そんなこと考えちゃう自分がイヤじゃない?
でも、生身のときはそういう感情がどうしようもなかった。
だけど、いまは少しは折り合いが付けられるようになったかな?
もう、アイドルじゃないし。
まあ、アイドルうんぬんの前に、"
「……」
「それとね。
あきめると楽になるんだね。
ちょっとビックリな発見。
『どんなときもあきめないでガンバル!』って。
そうやって、やってたわけじゃない?
〈
だから、失っちゃったモノ、もう手に入らなくなっちゃったモノ。
それに、もうできなくなっちゃったコト……。
『これもできない!
あれも手に入らない!!
ホントだったら、わたしだって……。
アイドルとしてだって。
女の子としてだって。
“あんなふうにできてた”のに!!!』って……。
そんなことばっかり考えて
まあ、もう
って、シツコイか、
ええと、それで……。
でも、『それじゃあしょうがない』って思ったとき。
思えるようになったときってのが正しいかな。
そうなって、すーっと気持ちが楽になったんだ。
それであらためて思った。
わたしには、ちゃんと"命”があるんだって。
死ななかったから、〈
これを言っているのが、老人、あるいは〈俺〉のようなヤモメ男ならいい。
良くも悪くも、ひととおり、人生のあるべき
だが、実際はまだ
〈俺〉は、いたたまれない気持ちになる。
もし、この世の運命を
〈俺〉は、それに対する
「あー!
『カワイソウ』って顔になってる~?」
「すまない。
いや、でも、それはちがう。
『かわいそう』なんて思っちゃいない」
「そう?
〈
でも、〈
なんか、気をつかわれちゃうのって疲れちゃう。
あと、
感情が
でも、日常と戦場では精神状態が違うからな……。
うーむ……。
「あ、ちょっと待って〈
「どうした?」
「ネットのニュースが……」
「〈
「本当か?!」
〈俺〉は、先日、ふたりで大暴れしてきた〈
「そうか。
さすがに
「〈
わたしたち……。
戦争を止められたんですよね?」
〈俺〉は、そんな単純なモノじゃないと頭の中のどこかでは思う。
実際、
きっと、
ただ、いま、それを……。
ここで〈
それに、これが何かの糸口になるかもしれない。
「そうだな。
〈俺〉に、
〈
〈モルモット小隊〉が
それでこそ。
その
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