ものすごく楽しくて読みやすい文学作品のような物語

物語はとあるアパートに住む「悠」が小学生の「亮太」を預かるところから始まります。悠は25歳で近所の食堂で働いていますが、もちろん子育ての経験があるわけでもなく……
というところから始まりますが、ここから枝葉のように物語は広がりを見せていきます。
同じアパートに住む大学生の詩織、階下に住むちょっと暗い感じのサラリーマン、さらに口うるさいお隣さん、などなどアパートに住む人々を巻き込みながら、多彩なドラマが展開していきます。
彼らの繋がりを通していくなかで、悠と亮太、そして詩織は人の優しさに触れ、人の痛みを知り、人間的に力強く成長していきます。
そこに書かれる物語は骨太で、優しさに満ち、とてもよく人間というものが描かれていると感じました。

読みやすい語り口はもちろんのこと、とても魅力的なキャラクター達、コミカルな描写の数々や展開の数々、さらに胸のすくような戦いシーンなどとにかく読むのが楽しい物語です。
枝葉を広げた物語でも、その幹が実にしっかりとしており、あたたかく物語世界をおおっています。
とにかく最初から最後まで楽しめる物語。
ぜひぜひ読んでみてください。

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