腕っ節が強くて、でもどこにでもいそうな女の子、木村悠。そんな彼女のところに小学生の男の子、亮太が転がり込んでくることから始まる物語。
読みやすい文体と等身大で親しみやすい登場人物で、連続ドラマのような感覚で楽しみました。
悠と亮太を中心に、アパートの他の住人を巻き込んで物語が展開していきます。そして色々な事実が見えてきます。お互いに顔は知っているのに、名前も知らないし話したこともない。でも話してみると意外といい人だったりして。
悩みがあったり、不満があったり、ときには厳しい現実を突きつけられることもある。でも逃げないで向き合っていく。そんな成長の過程がとても丁寧に描かれており、日常に追われているとつい忘れがちになる優しさを思い出させてくれる作品です。
何かがうまくいかない時も、うまくいっている時も、是非ちょっと読んでみて下さい。
物語はとあるアパートに住む「悠」が小学生の「亮太」を預かるところから始まります。悠は25歳で近所の食堂で働いていますが、もちろん子育ての経験があるわけでもなく……
というところから始まりますが、ここから枝葉のように物語は広がりを見せていきます。
同じアパートに住む大学生の詩織、階下に住むちょっと暗い感じのサラリーマン、さらに口うるさいお隣さん、などなどアパートに住む人々を巻き込みながら、多彩なドラマが展開していきます。
彼らの繋がりを通していくなかで、悠と亮太、そして詩織は人の優しさに触れ、人の痛みを知り、人間的に力強く成長していきます。
そこに書かれる物語は骨太で、優しさに満ち、とてもよく人間というものが描かれていると感じました。
読みやすい語り口はもちろんのこと、とても魅力的なキャラクター達、コミカルな描写の数々や展開の数々、さらに胸のすくような戦いシーンなどとにかく読むのが楽しい物語です。
枝葉を広げた物語でも、その幹が実にしっかりとしており、あたたかく物語世界をおおっています。
とにかく最初から最後まで楽しめる物語。
ぜひぜひ読んでみてください。
一軒のアパートには色んな人が住んでいます。お隣さんがどんな人なのか、どんな仕事をしているか、どんな人生を歩んでいるか。普段、こんなにも多くの人とすれ違っているのに、私はその人達の事をほとんど知らない。知る機会もないし、欲求もないのかもしれない。
日常生活は小さな出来事で、些細な切欠で激変するかもしれない。
主人公、悠を中心に沢山の人達が見えてきます。悠は何か特別な力も能力もあるわけではありません。ただの人間です。そうこの物語は、ただの人間がただの人間と触れ合う素敵な物語。
異常なまでに練り込まれた人物像と人間性が物語を展開していきます。
時には温かく、時には悲しい。人間の可能性を信じたくなる物語。