京都への取材旅行記録

 2012年の5月某日―――――新幹線乗って京都駅に到着した皆麻は早速、東本願寺を抜けた先にあるレンタサイクル店「京都みやび屋」へ向かいました。ここでは自転車をレンタルするためです。京都市内は坂こそあってもそれほど急ではないので、サイクリングするには最適な場所。キャリーケースを預けた後、かご付自転車に乗って市内散策を開始しました。


最初に行ったのが、神泉苑。ここは”渡りながら願い事を考えれば適う”で有名な法成橋がある場所。この後に回る所がたくさんあった関係で、中を一通り見て、橋も渡って即効で終わらせました。

この場所は後に、蘇芳菊の章を書くきっかけとなりましたね。その後、襷が裏稼業をしていた頃の話や、最終章で葉胡桃家の面々が勢ぞろいする時も舞台として使われています。


二条城を自転車で横切った後は、そこから更に北上。途中、祇園界隈を通った後にガイドブックに載っていた金平糖専門店・緑寿庵清水に寄ってカラフルな金平糖を買った後、鴨川沿いを一気に駆け抜ける。

この日は快晴だった事もあり、風もあったので駆け抜けるのが気持ち良かったです。

そうしてどんどん北上してたどり着いたのが、世界遺産にも登録されている下鴨神社。

入口の向かいにある観光客用と思われる駐輪所に自転車を置いて、徒歩。本堂へ行くまでの道は糺の森と呼ばれる、森林浴がガッツリできそうな自然が広がっています。この日は平日だったので人もあまり多すぎず、森林浴しながらゆっくり歩くにはピッタリでしたね。

ちなみに、下鴨神社は本編にて複数回出てきましたが、これはこの時体感したことを元に書いております。ただし、本編で出てきたような大木は、実際の境内には存在しません。

ただし、樹齢数百年?といわれている大木が本堂より少し外れた場所(作中で書いていたのとは別の場所)にあるのは本当ですが…


そして、本堂でお参りを終えた皆麻は再び自転車に乗った後、ガイドブックに載っているお土産の店を探そうと上京区辺りをうろついていましたが見つからず、結局あきらめて次の場所へ行く事に決定。ただ、作品とは全くの無関係ですが、京都御所の付近にある蛤御門を覗いてきました。皆麻は学生の頃から新撰組好きなので、その関係で見たかった場所という事です。


次に訪れたのが、パワースポットとして有名な晴明神社。晴明丼などのスポット的に有名なものを見て回り、安倍晴明の像を見た後、そのすぐ近くの壁に描かれた文字と絵を見つけました。目を凝らして少し読んでみると―――――そこには、安倍晴明の出自や、有名な逸話的な事が書かれていました。造りが新しく見えたため、観光客用に作ったのでしょうか。ただ、これを読んで改めて、晴明は妖狐の血を引いているんだなと思いましたね。

あとは、神社の近くにあった一条戻橋(復元された方の)も見てきました。

ガイドブックにあった通り、橋の側には晴明の式神の像が…。顔を見た時、何だか微笑ましかったですね。また、晴明に仕える十二神将も普段はこの橋にいたらしいので、その史実を踏まえて、萌木が現代からタイムスリップした時にたどり着く場所をこの一条戻橋に決めたという事になります。

今にして思うと、初日行ったほとんどの場所は、萌木が東京の友達を案内した話に出てきているといっても過言ではありません。


 神社を出た頃には夕方になってきていたので、みやび屋さんに自転車を返却し、キャリーケースを再び引きながら夜の市内へ繰り出しました。ホテルに行かずそのまま直行したのは、ガイドブックに載っていた居酒屋に行くため。そこのおばんざいが美味しいらしく、実際に行ったら過ごしやすい雰囲気と美味しい料理で大満足♪

因みに、葉胡桃兄妹が一緒に夕飯を食べながら襷が昔話をしたおばんざい屋は、ここがモデルとなっています。余談ですが、偶然隣に座った人が観光客で、しかも私が使ってたガイドブックと全く同じものを読んでいたという恐ろしき偶然に遭遇しました。もしかしたら、そのガイドブックにしか載っていないお店だったのかもしれませんね。

その後は、2連泊する事になっているカプセルホテル「ナインアワーズ」へ。造りがスタイリッシュでシンプルなのと、“スリーピングポット”という眠りに特化したカプセルにて就寝。…本当にぐっすり眠れたんで、大満足でしたね。



そして、2日目。

朝早めに起きて最寄駅でもある祇園四条駅から電車乗って向かったのが、鞍馬山。

パワースポット行きたくて来た訳ですが、ここは牛若丸(後の源義経)が幼少期を過ごした鞍馬寺がある場所としても有名。ゆっくりと登山道を上りながら、義経ゆかりのいろいろを覗いていく皆麻。歴史好きの血が騒ぎます!

また、萌木と晴明が僧正坊と対面する回では、この時見た鞍馬山の風景を想像しながら書いていましたね。

無論、登山中に通る本堂でお参りもしっかりしてきました。以前、TV番組で紹介されていた境内にあるパワースポットの一つ・金剛床。出ていたタレントは両腕上げて宇宙と交信のようなポーズをとっていたのを見かけた事があります。一方、私は両腕はあげませんでしたが、何かみなぎるような感覚はしましたね。


 鞍馬山も一番標高高い所まで行ったら、あとは下山のみ。一方で、反対側から上ってきた人達とすれ違い挨拶しながら、その足で貴船神社へ向かいます。

神社本堂と奥の宮でお参りをした後、客引きのおばさんに連れられるようにして入った所で、まさかの川床料理。

夏の風物詩であるこれ、“予約が取れないから”と半ばあきらめていましたが、まさかの待ち時間0入店!!これは、ちょっと得した気分でした。

川が流れるすぐ側で、川床料理を満喫。美味しかったです、値段もそれなりにしましたが(苦笑)

でも、それなりの値段出した甲斐あって、執筆の際は“貴船山”と“水神”のイメージがすごくやりやすかったです。川の水を直に触れたりしましたしね。


 その後に市内へ戻った皆麻は、単なる思い付きで平安神宮へ直行。因みに、この場所。本来は予定していない観光名所でした。

巨大な朱色の鳥居で有名な平安神宮。修学旅行中の学生を見かけたりと、人はやはり多い。ただ、これも偶然の賜物なのか…おかげで、襷の結婚式を平安神宮でやらせよう!という構成が湧き、実際に描けたかんじです。

余談ですが、執筆していた2012年。アニメソングの女王・水樹奈々さんがこの平安神宮でライブを行っていたそうですね。

奈々さんのライブに行った事はないですが、この神宮でのライブとなると、ものすごく神秘的で素敵な雰囲気の中盛り上がったライブだったんだろうなと、当時考えていたのを思い出しました。


その後は、聖護院八つ橋総本店で生八つ橋買って、錦市場を往復。池田屋事変跡の塚の側を通り過ぎて河原町にある京都ロフト行った後は、ホテルに戻って就寝いたしました。

余談ですが、私が泊まった「ナインアワーズ」は、一見するとホテルに見えづらいです。結構、ビル自体は細く奥行がある構造ですしね。でも、交通の便いいし、価格もリーズナブルなので、「しっかり寝れれば良い」思考の方にはお勧めのカプセルホテルだと思います。ただし、老舗旅館によくあるような美味しい料理はないのであしからず…。



そして、最終日。

2日目より早起きしてチェックアウトし、駅のロッカーにキャリーケース突っ込んでから向かったのが、今回最大の目玉でもある『平安装束体験所』という場所。

読んで字の如く、平安時代の装束の体験ができる施設で、体験の他にも神前結婚式とかできる婚儀用の衣裳も貸し出ししている所です。旅行前からわからない事を軽く確かめてから、予約。予約時間が早めだったので、それに合わせて仕度してきたといった次第です!

その後、狩衣の着衣体験開始!!

担当してくださったのが、山科流の流れを組みお仕事されている、プロの装束師さん。着付けを開始してすぐくらいに、お約束ともいえる質問を投げかけられました。

「何故、装束体験しようと思いましたか?」

体験した際はまだ本編を執筆開始する前だったため、少し言いづらかったですが…

「小説を書く題材にするためです」

そうお伝えしたら、結構喜んで戴けたのをよく覚えています。

でも、そういった名目で平安装束体験所(そこ)を訪れる方は多いらしく、近年では陰陽師関係のメディア作品の影響で、女性が狩衣を体験しに来るのが増えているのだとか。で、小説の事を話したら、結構いろんな事を着付けしながら教えてくれました。

因みに、私が選んだのは(有職でいう)浅緑と深緑の間的な色をした狩衣。模様としてあった丸文は数が多かったので、平安時代では若い人が身に着けるに相当する奴ですね。この時はまだそれを知りませんでしたが、先日久々にデジカメで撮ってもらった写真を改めて見たら、「そうなんだろうな」と思いましたね。

着付けが終了した後はというと…

「やりたいポーズを試してください」

私に対してそう言ってくれた後、助手さんによる写真撮影。

ここではデジタルカメラやスマートフォンといったカメラを持参すれば、体験所の方がうまい具合に撮影してくれるサービスがあります。

デジカメを所持していた皆麻はもちろん、こちらで撮っていただきました。また、ブログ用に、スマホのカメラでも撮影してもらいましたね。

完全に遊んでいる風で楽しんじゃっていましたが、主人公・萌木になりきれた気がして本当に面白かったです。小説で

「こんな体勢でのシーンとか…こことか…」

と、小説で書く予定だった場面を現すような仕草の他、単なる思い付きだやったポーズも多数あり。

一方、どんなポーズが写真での見栄えがよくなるのか知り尽くしていた装束師さんはいろんなアイテムを使って、撮影を楽しませてくれました。

「檜扇持ってみましょう」

「竜笛持ってやってみましょう!」

といった具合で。

この、2~3時間による体験は萌木が「女性物の装束よりも、狩衣の方が動きやすい!」と語っていたのに対し、身を持って証明できたのかなと思います。

実際、狩衣以外の着物だと、皆麻は大学の卒業式で袴をはいてSAX吹くなんて事がありました。

その時は、お腹が締め付けられている関係で動きづらかったりもありました。しかし、狩衣は本当に軽く、指貫(さしぬき)が少し長めなので最初の一歩は戸惑いましたが、慣れてしまえばとても歩きやすいのがわかりましたね。

平安時代(とうじ)の人々は浅靴みたいな靴底の高さがある靴を履いていたので、指貫の長さは、床につきそうなくらいが調度いいのだと実感。また、牡丹の章にて萌木が南雲に着付けするシーンがありますが、これはこの日やってもらった時を思い描きながら執筆しております。

また、蘇芳菊の章で萌木が義俊の着付けを手伝ったりもします。あれも、着付けの際にしてもらっていた事を思いだしながら執筆したかんじです。ただ、義俊の時は武官束帯だったので、狩衣とは多少勝手が違ってきますが…。


装束の体験が終わった後は小腹がすいたので、三条にある「よーじやカフェ」でチーズケーキと有名なよーじや特製カプチーノを戴きました。

その後は、お土産捜しもあって、祇園へ直行。

堀川小路や二年坂。そして、ねねの道を散策したりして、お土産を購入。(観光客が扮している)舞妓さんに出くわしたりと、祇園の情緒あふれる街並みをしっかり堪能致しました。

ここでの体験を元に、正月の話では萌木と彼女の母親が散策した事が描かれましたね。



この後、京都駅から新幹線に乗って東京にある自宅へ帰還。

怒涛の3日間でしたが、リフレッシュもパワースポットめぐりもできて、とっても満足でした!!そして、この旅行で撮った300枚近くのデジカメ写真を資料として、『装い改めますればっ!』の執筆を開始したという次第でございます。


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