道中記みたいになった『八百万の軌跡、何処へと』
『八百万の軌跡、何処へと』を書くきっかけ
「八百万の軌跡、何処へと」を書こうと決めたきっかけ―――――一つあげるとするならば、やはり日本の妖怪に興味があったからでしょうか。
過去2作品書いて描き切ったと思った和風ファンタジーでしたが、間に洋風ファンタジーをいくつか挟んだのもあって、また書きたい衝動に駆られたのやもしれません。
あとは、「大正時代を舞台にした作品が書きたかったから」といった所でしょうか。これを書くより前にはボーカロイドの名曲「千本桜」であったり、渡瀬悠宇先生著の「ふしぎ遊戯―玄武開伝―」の主人公・多喜子が大正時代の女の子だったからというのもあると思います。
執筆するに当たり、主人公はどうしよう。どんな話だと、日本国内にいる妖怪の事を執筆できるだろうか。最初、資料として小松和彦さん著の「知識ゼロからの妖怪入門」(幻冬舎)という本を購入。資料本には日本各地の妖怪が所せましと載っていたので、かなり興味深く読んでおりました。
その中で見つけたのが、日本全国でいろんな名前のがいるとされる天狗。同時に思いだしたは、都内だと八王子にある高尾山に有名な天狗がいたという事です。
元々高尾山は、奉仕員として昔お世話になっていた川崎大師と同じ真言宗智山派の薬王院がある事を知っていたのと、交通の行きやすさから、取材がてらに登山を決行しました。行ったのが2015年8月のため外は晴れていて暑かったですが、登山初心者の皆麻でも簡単に登る事ができました。
実は、高尾山。小学校の頃に遠足で登った事があるため、かなり久しぶりの登山といった所でしょうか。あれから「都心からすぐに行ける山」として有名になったりしたので、だいぶ変わった所もあるのでしょう。因みに私は、複数ある登山道の内、最もポピュラーな方を登りで利用しました。下山時には、吊り橋がある道で降りましたね。
このプチ登山のおかげで、主人公の八那が八王子に住んでいたという設定と、高尾の天狗を登場させるというところが描けたといった所でしょうか。また、執筆するにあたって、東京に関しては、まだ東京府と呼ばれていた大正時代頃の地図資料を探して見比べながら執筆。当時はまだ八王子市内のどのエリアも村として存在する所が多く、村の区域を見て高尾山付近がどこに相当するのかも苦労しました。また、因みに、序盤で豆腐小僧の出逢ったあの地域は、現在でいうところの神田や秋葉原に位置します。
妖怪以外で調べたのは、日本神話。過去作品の際も調べましたが、今回はそこよりもう少し後。素戔嗚が八岐大蛇を退治するという辺り限定のため、調べやすかったのもありますが、そこからどう設定しようかが意外と難しかったです。
また、八那の父・酒呑童子を書くに至って、結構前にやっていたゲーム「十鬼の絆」とかがイメージする上では参考になったかもしれません。配下である茨城童子の設定は皆麻によるフィクションですが、考えるのが面白くて想像が膨らみます。
執筆していて思ったのは、意外とどの妖怪を登場させようかと決めるのが難しかった事です。天狗を登場させるにあたって、八那が訪れる山も限りがあり、山がある地域も全国都道府県の中でも一部に過ぎません。その地域にいたとされる妖怪を登場させないと時代設定的にもおかしくなるので、正直難しかったです。ただし、主要登場人物である梓や安曇達のような妖怪は、そういう難しさもあって「全国各地で出没する妖怪」の中から“小豆洗い”と“二口女”を選んだという次第です。無論、豆腐小僧もそれに当たります。
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