漢字多くて苦労した『装い改めますればっ!』

『装い改めますればっ!』を書いたきっかけ

『装い改めますればっ!』を書こうというきっかけの一つ目が、前作である『八犬伝異聞録 蒼き牡丹』でした。その作品で和風ファンタジーにはまってしまったのか、

「次回作品も絶対和風にするぞ!!」

という意気込みバッチリで取り組み始めました。

蒼き牡丹で戦国時代(の一歩手前辺り)をやったので、次にやろうと思ったのが平安時代。

ただ、そこで悩んだのは平安時代が舞台の作品は大方、陰陽師や魑魅魍魎が出てくる作品が多いじゃないですか。近年では和歌関係の作品も増えていますが、あとそれ以外は源氏物語といった文学作品絡みのが多いです。

皆麻も陰陽師は好きなので、出てくる作品はいくつか見た事がありますが、ここで陰陽師中心の物語では、何かありきたりかなと感じていました。そこで、「平安時代を象徴する物って、(陰陽師以外だと)何があるだろう?」と思案した結果――――――――十二単に例を見るきらびやかな装束はどうだろうか?

という事で、装束にしようととりあえず、決定。

また、他のきっかけとしては、やはり女性向けアドベンチャーゲームの影響も少なからずあります。当時は雅恋という同じく平安時代を舞台にするゲームをやって、想像を膨らましたりもしていました。


 問題は、装束に関する知識。そして、物語をどう組み立てるか。何せ服飾関係とは無縁の学生生活を送ってきたので、装束でいう色目とか色自体の知識とか、ないに等しかったです。なので、資料にとまず買ったのが八條忠基さん著の『素晴らしい装束の世界』。

パラパラと読んでみましたが、やはり漢字だらけで難しかった…。

そんな中で目を引いたのが“装束師”という職人の名と“装束の着方”と書いてあるページでした。平安時代後期から室町にかけて呼ばれた装束の知識豊富で衣紋道を極めているのが装束師。また、着付けの方法を見た時、同時にインターネットで資料にあった装束店のホームページ等を参照しました。それを経て、「平安時代中期とかは衣紋道がなかったので、装束師の代わりみたいな仕事を主人公にさせてみよう!」…という経緯で、主人公・萌木が“着付け師”という実在しない仕事をするという設定に方針を定めました。


 ただし、本を読んだだけではいまいちピンときませんでした。

「なら、実際に目にして勉強してこよう!」

と思い立って掲載を開始する半月前くらいに、多くの装束店がある京都へ取材行くぞ!!という事になりました。無論、京都へ行った一番の目的は本業でお休みが取れたので、リフレッシュ旅行行きたい!そして、パワースポット巡りたい!…という動機ゆえですがね。笑 (この京都旅行に関しては、別の回で詳しく書かせて戴きます)

そして、旅行で見聞きした事を中心に、『装い改めますればっ!』の執筆を始めたといった所です。


この作品での初ともいえる試みですが、私が実際に体験・経験した事が多く盛り込まれています。

作中で現代と平安時代という二つの時代を行き来する萌木。現代では京都市内はもちろん、少し離れた嵐山や、名古屋。江ノ島に行ったりしていますが、これらの地は全て、皆麻が過去に行った事のある場所でもあります。最も、名古屋は執筆中にたまたまプライベートで行く事となり、用事ついでにプチ観光した事が公を奏したといった所でしょうか。

もう一つは、無料で使える標準語を京ことばに変換できるサイトを利用した事。ちなみに、皆麻は生まれも育ちも関東なので、標準語以外は話したことも話せもしません。

ですが、萌木は京都の装束師の家で育った女の子なので、京ことばを話せない方がおかしいので、ちゃんと入れてあげなくては…!と思い、その見つけたサイトで変換した言葉を台詞として頻繁に利用していました。

ちなみに萌木が「東京の専門学校に通っていた」という設定は、平安時代では標準語を使わせるつもりだったので、京ことばと標準語の両方を話せる…という設定にしたいがために決めた経歴という事になります。

具体的な感想は今のところ戴いていませんが、京都にお住まいの方や、装束関係のお仕事をされている方からの感想を戴けたら、すごく嬉しいなと今は考えている次第です。


装束以外の事で勉強したのが、陰陽術や日本神話。登場人物に安倍晴明がいる以上、陰陽術は避けて通れる道ではなく、日本神話についてもまた然り。

ただ、装束がこの作品の中心になっているのも事実なので、陰陽術によくある長い詠唱とかは、敢えて書きませんでした。最初は頑張ってみようかとも思いましたが、時間の都合上。また、詠唱考えるには祝詞の勉強等も必要になりそうで、これ以上やるとパンクしそうなんで…という、個人的な事情もあったりします。

その代りではないですが、双方とも資料となる本を一冊ずつ購入してしっかり読みました。

賀茂道葦(かものみつよし)とかは、似た名前の陰陽師がいたのでそこから字をもらい、四角祭とかも、その資料を見て知りました。日本神話は日本史の授業で多少やっていた事もあって頭に入りやすく、実際に必要な情報はイザナキがイザナミと離縁する所までだったのですが、一通り読んだ事で、前半部にある江ノ島神社でのエピソードが書けたといっても過言ではありません。


書き終えて思ったのは、「ひたすらに漢字が多いよね」という事。色目や装束の部位名称の関係で仕方ない事なんですが…最近見かけたラノベの書き方のホームページに“漢字がたくさんあるのはあまり好まれない”という表記を発見。…とても複雑でした。

これに関しては考えていませんでしたが、メディア化できる作品かなとも思えます。アニメ化・実写化におけるキャストの編成が誰とまでは考えてなくてもいけそうだし、女性向けアドベンチャーゲームにも全然できると思います。

また、執筆していて面白かったのは、装束の勉強をたくさんしたおかげで、その年に放送されていた大河ドラマ・『平清盛』では衣裳といった視覚面でも楽しめたと思います♪


タイトルの由来ですが、“装”という漢字を使ったのはもちろん、装束の事を書くためですが…“ますればっ!”という言い方をタイトルにしたのは、この作品が一重に明るい物語である事を強調したかった(R-15指定や残酷描写もなかったので…)といった具合でつけてみました。

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