優しくて穏やかな心ときめく恋愛小説、からの――

緩やかな斜面をゆっくりと登る登山電車のように、少しずつ少しずつ、カタコトと終着駅に導かれて行くたおやかな恋愛小説……で終わるならばミステリーのカテゴリにいるはずないわけで、既に多くのレビュアーさんが言及なさっているように衝撃展開があります。

物語を貫くギミック自体はさほど複雑なものではありません。しかし丁寧で繊細な感情描写が展開の急変にゾッとするような落差を与え、その恐怖と驚愕を作品の骨子として成立させています。恋愛小説としてよく出来ているからこそ、ただの恋愛小説ではない作品となっている。そういう矛盾を孕んだ小説です。百聞は一見にしかず。是非、ご一読下さい。

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