第15話
/拾肆
何で、生きているんだ。
それが最初に思った事だ。
本当だったら、終焉世界に行けると思ったのに。
終焉世界、それは俗に言う、死の世界の事だ。実はこの名前、イーリアが付けた名前だ。イーリアと僕しか知らない、僕達だけの言葉。イーリアとの大切な思い出の一つだ。……イーリアに取っての“天国”は、空の上とか、楽園みたいな所と言うイメージではなく、荒れ果てた荒野と言うようなイメージだったらしい。“命が終われば、土に還る。その土が積み重なって出来た光景、それが私にとっての天国、そう、終焉世界なの。そしてそこで死者は、輪廻転生を『探す』旅に出るの”……と、言うのはイーリアの言葉である。
星が爆発して、僕はそれに巻き込まれた。そして今、宇宙空間を漂っている。
なのに、生きている。
『カイネよ』
そんな時、ある声がした。
『世界を、救いたくはないか。お前の育った星の様な、滅亡を間際とした世界を、救いたくはないか」
何を言っているんだと思ったが、黙って聞く。
『お前には、不死の呪いがかかっている。その力で、死に怯える者達を、救ってはくれないか』
何でだ、と聞いた。
何で、俺がそれをしなければいけないんだ、と。
『お前には、不可能を覆せるほどの力がある。そんなお前にしか救えない命だって、あるからだ』
僕は無言になって、考えた。
その時頭に浮かんだのは、イーリアだった。
……何で! 何で皆を置いてきたの! カイネなら……皆を救えたでしょう?! 何で……何で……なんで…………なの……
イーリアは、僕なら皆を救えたと言った。
けど、僕は実際救えていない。皆を、見殺しにしてしまった様なものだ。
……けど、もし許されるなら、もっと大勢の人を救いたい。
この命に代えてでも、救いたい。
「……分かった」
『そうか、恩にきる……カイネ。では、すぐにでも救ってもらいたい世界があるのだが、いいか?』
僕は即答した。
「いいよ」
その直後、視界が歪んだ。
『我が名はゼウス。お前を、導こう』
くらくらする頭で、僕は必死になって叫んだ。
「我が名は、カイネ! 世界を、救う者だ」
そして僕は、他の世界に行った。
この日から、僕は、新しい人生を始めた。
この日は、僕の人生の終わりで、同時に始まりの日だった。
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