第12話

 /拾壱


「死んだか」


 そう呟いたのは、神々の王。

 豪華絢爛すぎる椅子に背を持たれかかせ、右手で頬杖を付きながら、面白くなさそうな声で呟く。


「……カイネ」


 不意に溢れたその名は、確かに勇者の名そのものだった。


 神々の王は左腕を持ち上げ、雷霆ケラウノスを発生させる。左腕に蛇の様に絡みつく。バチリと音を立てて、今か今かと王の命令を待ちわびる雷霆は、まるで飼い犬の様であった。


 雷霆は、王の一言で攻撃を始める。雷霆とは、神々の王の武具であり、宇宙を焼き尽くすと言われる異常な程の力を持つ化け物でもある。

 王が、「壊せ」と一言呟けば、一瞬にして目の前の世界は消滅するだろう。タルテトを含む人間族の領地以外も。星ごと、である。

 神々の王は、雷霆を左腕発生させ、そのまま目を閉じた。


 そして数秒後、雷霆を解除した。雷が小さくパチリと鳴り、空中に消えていった。


「……まだだ……」


 その一言と共に神々の王は左腕を突き出し、雷霆とは違うものを出した。


「我、ゼウスの名において命ずる────……」


 そこから先は、聞き取ることが出来なかった。それは、神々の言語。人間はまだ神々の言語のほんの一部しか知っていないと言われている。そして、今神々の王ゼウスが放った言葉は、その神々だけの言語である。


「…………────命令だ、カイネよ……世界を、滅せ」


 その言葉が放たれた直後、タルテトで眠るカイネに、変化が起こった。突然カイネの周囲が豪炎に包まれる。それは綺麗な球状となると、一瞬動きを止めた。

 そして次の瞬間、その豪炎が爆ぜ、巨大な爆発を起こした。


 その爆発の中心には、豪炎を纏うカイネがいた。

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