この作品がおもしろいのは、著者がプロだから? 有名人だから? いいえ、違います。おもしろいからおもしろいのです。たとえこの作品が無名の誰かが書いた物語でも、間違いなく私は「おもしろい」と言っていました(作品を見つけることができるかどうかはさておき)。そして、そんな作品を書ける人間は決して多くありません。
「大きな猫がいる」という、ただそれだけの状況、たった1つのフックからここまで魅力的に掌編を描ける人が、どれだけいるでしょうか。文体の端々から感じられる筆力と、たしかな知識にもとづいた説得力のある描写。そして、猫と熊本への愛。
この物語の舞台となった場所へ行きたいと、そう強く思わせる魅力がこめられた作品です。