創作者が一度は見る悪夢。あるいは飽いた読者の希望

 読了いたしました。
自動創作器(機)については古くから、小説のネタになってきました。
しかし、現時点でこの小説ほど「リアリティ」を感じさせる小説はないでしょう。
特定作家の作風をAIで実現しようとするプロジェクトも実在しますし、やがていつかは……、と思えなくもないのです。
 一方で、小説をこよなく愛する者のとしては、「読みたい物語」であれば、人間であろうとAIであろうとどうでもいいの、という気持ちにもなります。
 あるいはまた、ファンタジーよりSF系に傾倒する身であれば、作品に登場するSF作家のようにシンギュラリティに遭遇できた僥倖に喜悦する気持ちもわかるのです。
 そのあたりの創作者、読者の心の揺れを描ききるだけでなく、人間至上主義者への辛らつな皮肉も効いています。

 文章は平易でありながら理知的であり、相当な熟練を感じます。ただ、人によっては第一話から二話にかけて設定飽和を起こしてしまうかも。
それさえ乗り越えれば、あとは話は流れて行きます。

 それにしても、書詠フミ。
 誕生日を過ぎた彼女はどこに行ったんでしょう。

 不思議に心に残りました。

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