[投稿者としての裏話]

※)完結済みの本編をまずお楽しみください。

※)このパートは、「ろくごまるに」先生の『カクヨム』における作品発表に便乗しtもとい勇気をもらった筆者が、刺激された記憶を元に当時の投稿者としての恨み節もとい裏話を披露するために書かれました。夢と希望を失いたくない人は見ないでいた方がいいかもしれません。森へお帰り。

※)大きな公募賞(ナントカ大賞とか)では、さすがにこんなことは起こりえません。その点はどなた様もご安心を。



 本作品は、角川書店(当時)の隔月刊小説誌『ザ・スニーカー』が毎号行っていた誌上小説コンテストに、私こと久保田弥代(筆名。当時も同じ)が応募した作品です。1998年に執筆応募し、掲載は1999年初頭、ということでありました。

 とあるwebサイトにその頃の『ザ・スニーカー』掲載作一覧がとりまとめられています。地道な「記録保存する」という努力が尊いということを教わりますね。ありがたいことであります。←自分でやれ

http://homepage2.nifty.com/te2/m/snk1999.htm#m10924


 『ザ・スニーカー』誌の小説コンテストのレギュレーションを解説しますと、二つの段階を踏む形式でした。

 第一段階として、原稿用紙30枚以内の制限(今となっては懐かしい響きですね)で書かれた短編小説を公募し、編集部で内部選考、三作品を選出して誌面に掲載します。

 次なる第二段階として、読者アンケートによる三作品の人気投票を行って、最多得票となった作品に対して、「編集部から連絡を差し上げます」という“ごほうび”が用意されたものでした。読者投票という過程を要したため、掲載されただけでは、まだ特段なにも良いことはないというシステムです。


 さて。


 手前味噌な話ではありますが、本作品『凍土の英雄』は、三作品の人気投票を僅差で勝ち抜き(掲載次号の結果発表によれば、1票だったか5票だったか、それくらいの僅差だったと)、見事第一席の栄誉に浴することができました。こんな絵面の地味な作品にもかかわらず、イラストまで投稿してもらえたのはありがたいことでした。


 一席に輝いたということは「編集部から連絡」というやつが来るのだなこれは楽しみだ、と当時、発表号を読みながら胸を躍らせたものでした。

 さすがに誌面のコンテストでは“これをもってデビュー”などという僥倖はあるまいと承知していましたが、たとえ『こうした方が良い』とのアドバイス一つであっても、ほぼ一人で書いては直し、という日々を送っていた当時の自分にはありがたいことだったのです。それくらいのことは「連絡」してもらえるのだろうと思ったのです。

 私は待ちました。その連絡を。

 今なら分かります。その連絡というのは、発表より先に行われているのが、まぁ普通だということを。


 つまり。


 来なかったんですよ、なンにも。

 いやびっくりしましたね。

 待てど暮らせど来ない。

 いつの間にか次の号まで出てる。でも来ない。

 あっそうかー。

 そういうものなのかー。

 とか妙な納得をしました、当時は。今のネットスラング的に言うなら「釣られたわー」とかでしょうか。

 今では、多少なりとも出版編集の業界に携わって生きた時期がありますので、なんでこんなことが起こったのか、なんとなく察しは付くんですが。その頃はまだウブでした。すでに30歳も近かったんですけどね。


 でもまぁ、ツラかったです。 


 約束を反故にされるのはツラいものです。藁にも縋りたいワナビにとって、この経験は、まさにちぎれた蜘蛛の糸だったのです。

 そして今般、『カクヨム』において、ろくごまるに先生の壮絶な「体験談」を拝読し、『ビジネスでこれは堪らぬなぁ』『本人ばかりでなく作品もファンも浮かばれないなぁ』と同情申し上げるとともに、忘れることのなかった自分の体験が、ふつふつと熱を持ち始めたのでありました。


 ずいぶん長いことたったし、出しちゃうか。


 そんなことを思いました。『カクヨム』という場が出来たことだし、『ザ・スニーカー』誌面に掲載されたことで、権利的な問題から外に出しづらかった(話題のタネにしにくかった)短編二作品を公開、供養成仏させられるのではないか。そうも思いました。権利で怒られたら「同じ角川だし、許して?」でいってみようと考えてます。

 もちろん自分自身の体験は、前述したろくごまるに先生の様に、ビジネスとして、経済的に、あるいはファンとの信義則ないし作家と出版社との間のそれが揺らぐような、大それた出来事ではありません。この経験で自分の人生が曲がったということもありません。そんな世間的にたいしたことではない――のですが。


 ですが、やはり心の中に溜まった澱ではあるので、こうして明け透けにしてしまうことで供養・成仏させてやりたいと考えた次第です。

 申し添えますと、私の投稿作品が『ザ・スニーカー』に掲載されたのは二回。ここ『カクヨム』で投稿した「壺中天」、「凍土の英雄」の二作品です。どちらも、実にラノベらしくありません。これらを選抜し掲載して頂いたことそれ自体は、自分のような作風の者にとっては大きな希望でした。この点は最後に付け加えておかねばならないでしょう。




 駄文御容赦。

 ちなみに、デビュー後に角川書店系で「書いてみません?」な話を頂いていろいろ書いた考えたってことがあったんですが、これがまた見事なまでに巧くいかない。自分、こんなに下手でバカだったっけ? とか恐ろしく神経すり減ったくらいにダメでした。その節は逆にこっちがすみませんでした、何も出来ないで。

 やっぱり書き手としての「相性」みたいなものはあるんだなぁとその時あらためて感じたものでした。「縁がない」ってこと、本当にあるね。しみじみ。

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凍土の英雄 久保田弥代 @plummet_846

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