青葉の風吹く頃には

作者 久保田弥代

70

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★★★ Excellent!!!

風景写真を撮る女性が、旅先で、俳句を詠む男性と出会う。
写真も俳句も、一瞬の風景を残すもの。

俳句は心情を入れずに、見たままを詠む。
と言っても、言葉の選び方に、心情は現れるんじゃないかと思います。
葛原さんが悩んで考えて、最後に選んだ言葉がそれだったように。
葛原さんの句は、すごいです。
仮に物語を一切読まず、句だけを読んだとしても、風景がありありと脳裏に浮かびます。
風が吹き抜けていく、その先まで目に見えます。

今は無理でも、いつかは。
そう思わせてくれる物語でした。

★★★ Excellent!!!

ひとつひとつの言葉の選択が吟味されていて濃密
俳句の17音の密度がそのまま小説になったようで

私が高校生の頃、国語の先生(川柳の人でした)が「俳句は風景を詠み、川柳は人を詠む」と語ったことがありましたが、この作品、写真と俳句を題材にしながら人の心の機微も描く素晴らしい掌編でした

★★★ Excellent!!!

 久保田氏には創作論「カクヨムでヨミカキ」にコメントさせていただいた。これだけ精緻な理論、心がまえを説いている方がわずか数千文字のきつい制限に挑んでいる。書いている横から手元を他人にのぞきこまれているようなものだ。「ほら、こう書くんですよ」と言いながら、同時に筆を動かしているような余裕を感じた。途中説明的な部分があるな、と思いもしたが、読了してみればこのスペースでは必然に思えた。むしろ、最初からスペースに収めることを楽しんでいるというべきか。まさに俳句の世界である。素晴らしい。

★★★ Excellent!!!

自分捜しをしながら撮影旅行をする主人公が、自由の意味を捜します。

美しい自然描写の妙と淡い恋。そして、本当に目指したいものが交差し、爽やかな展開が心地よいです。

この物語、俳句のできが肝だと思いますが、キラリと光る感じです。


風景を切り取る事は、心を切り取る事だと思う物語。

★★★ Excellent!!!

同じものを好きだと感じられる相手に出会えたら、それは幸福だ。
表現の方法に違いがあっても、例えば小説と音楽であっても、
創作する者同士、どんな「好き」をインプットして形と成すか、
その感覚を語り合い、その感性を共有することは有意義で楽しい。

写真と俳句は、一瞬を切り取る。
その一瞬を、小説で如何に表現するか。

緻密で連続的な情景描写が、その一瞬に出会うとリズムを変える。
山を登り、汗をかき、息が切れ──ある瞬間、ぱっと前が開ける。
一人きりの撮影旅行をする「私」は、その情景に心を惹かれる。
「私」は無我夢中でシャッターを切り、一瞬を切り取っていく。

ああ、この人には私の「好き」がわからないんだな、とか。
結局この人は外側だけしか物事を見ていないんだな、とか。
そういう、もどかしさを抱える「私」の気持ちには強く共感した。
もどかしさを振り切るためにエネルギーを振り絞った経験もある。

「それは文字で表現できない」と言われ、悔しい思いをした。
スポーツの試合に感動して、その躍動感を描きたいと口にした日。
「若い女に書けるはずがない」と言われ、ふざけんなと思った。
膨大な情報と覚悟が必要な戦の歴史小説を、だからこそ私は書く。

「恋の話」でありつつ、創り手の感性の在り方を描く物語。
感性に「蓋」をしている人、されている人には響くはずだ。
爽やかな風が導く先の開放感を噛み締め、味わっていただきたい。
できるなら声に出して、十七音の響きを楽しんでいただきたい。

★★★ Excellent!!!

ネタバレかもしれません



















主人公は風景を撮る子です。その子の彼は人物を撮る。彼氏はちょっと風景をバカにします。
でも、主人公の写真一枚一枚にはきっといろいろな人との関係が含まれている気がする。
そして、その子を離れた写真からきっと新しい人との関係が生まれるのではないかなぁ。と思いました。

写真と俳句は似ている。

想いを込めはしないけれど、その景色、言葉の選択によって知らず知らずのうちに自分を表現する。

風景描写が巧みで引き込まれる作品です。

★★ Very Good!!

物語はひとりの女性が風景写真を撮るために旅行をすることから始まります。
新緑の薫る季節、清々しい風景をカメラ越しに切り取って行く。

彼女はそこで新たな出会いと過去への決別を経験するのですが、その過程が瑞々しく綴られていく様は、読んでいて心地よいです。

私の光を遮る男性とは一緒にいられない。っていう内容の歌を思い出しました。ポップソングですけど。それからカクヨムで読んだ小説の中に、男女の関係はどっちがマウントをとるかの力勝負だ、みたいなことが書いてあって、ほんとにそうだなぁとおもったりもしました。

青葉の輝きを切り取ってそこに留めることができるのは、誰なんでしょうね。
写真でしょうか、俳句でしょうか、それともあるいは。

夏の強い日差しを受けて、彼女が一層輝きを増していくのが想像できるようでした。




ところで全然レビューとは関係ないんですが、異性の一人称を書かれる上で心がけていることなどはありますか? いつもとても自然に読めるので、どんな秘密があるんだろうと気になっているんですが……。