許されざる恋をしたノーウェルは、凍てつく雪原を歩く。ただ愛する人といたいがために、かつて英雄が成し遂げたという踏破を目指すが、その道程は過酷なもので――。
ただひたすらに雪の中を歩いていくというだけの作品(※違います)なのに、雪や氷の描写が緻密で、まるで本当に自分がそこにいるような、主人公に乗り移ってしまったかのような臨場感があります。それはもう、荒く細い息づかいや、喉をひりつかせる冷気まで感じられるほどです。体に感じるのは寒さと言うよりも、痛さと言った方がいいかもしれません。まさに「白銀の異世界」に相応しい作品だと思います。
過酷な環境にくじけそうになりながらもノーウェルは歩みを止めません。それはひとえに愛する人と一緒にいたいがためです。氷雪の表現と共に、その必死さが印象に残る作品でした。
(「白銀の異世界」4選/文=藤浪保)
ここのところ、よく考えることがある。
リアリティってなんだろう。
本当に体験したことを書けば、リアリティなのかな。
きちんと調べたことを書けば、そうなるのかな。
でも、この作品を読んで受け取ったのは
手触り、いや、身体中で感じるリアルだった。
凍土と聞いて、簡単ではないことを知る。
きっと作者だって、こんな厳冬の中を歩いたのではないはず。
この作品書くためにやっていたら、違う意味で凄いけど。
言葉ひとつで、相手に伝えるために
心だけではなく、身体に響かせるような
そんな表現が、読んでいる間 ずっと沁み渡る。
受け取るこちらも、今までの体験を総動員して想像してみる。
寒さが、冷たいではなく、痛いという感覚。
感覚すらなくなって、そんな手を 急にお湯につけたら
骨が折れてしまうんじゃないかというような。
*第2話が 個人的にまた興味深い。
当たり前だけど、作家さんも人間で、悩んで大きくなるって知った。
作品と作者本人の、両方が気になる性質なものですから。
ふわふわ世迷言を書いてるだけの素人が、つぶやいてみました。
(勇気を出してレビューしたので、大目に見て下さいね。)
本作品を正当に評せるだけの文才の無さに愕然とするが、とにかく読んでみて欲しい。最初の3行だけで、凄さが分かるだろう。
これだけの作品にカクヨムで出会えた幸運に深く感謝したい。
読了後に、しばし溜息、そののち、恋愛・ラブコメジャンルでアップしていた拙作を全て削除したくなった。この作品を前にしたら、全てが色褪せる。
それでも踏みとどまったのは、わずか紙一枚の薄さでも進歩して、氏に学びながら向上できたらという思いが込み上げてきたからだ。
それもまた、この作品の主人公たちの熱い生きざまが引き起こしてくれたものだ。
読了後、こうしてレビューを書くまで数週間を要したことからも、どれだけ心を動かされたかが分かるというものだ。
これからの氏(師)の作品を追い続けたいと思う。
この作品には、己の愛を示すために苦難へ挑む男と、男を信じて待つ清き娘がいます。2人の間にある深い愛情と、その愛情を試す試練。その2つの要素が、たしかな筆力によって圧倒的なリアリティとして迫ってくる。これは、そんな小説です。
私が軽い文体のネット小説に慣れていたからでしょうか。最初に冒頭の数行を読んだとき、思わず眩暈がしました。これは読み進めるのが大変だと、そう思いました。
しかし、実際に読んでみればこれが“読みやすい”。気がつけば眩暈が酩酊感に変わり、この文章をもっと読ませろと叫んでいました(心の中で)。そして、気がつけば読了していました。これがこの作品を「美酒」と表現した理由です。
現在のネット小説の風潮に真っ向から喧嘩を売るような、深く練りこまれた文章。それは、もしかしたらネット小説に慣れた人間にとっては「うっ」と呻いてしまうものかもしれません。ですが、それをこらえてまずは全体の1/3まで読んでみてください。
一文が次の一文への呼び水となり、積み重ねられた描写が圧倒的な臨場感を伴って心に迫ってくる快感は、筆舌に尽くしがたい。情景を描き出す美しい文章に心が躍る。私には絶対に書くことができない“精緻な文章”であるがゆえに、羨望と感嘆の念を禁じえません。
この作品はもっと多くの者が味わって然るべき小説だと思ったので、レビューをさせていただきました。