【番外編】褐色ロリ少女はシャノンにイケナイ知識を植え付ける

 銀河最大と言えるほど発達したこの都市は、銀河の主要組織が本部や大型支部を構えるから、基本的には清廉なイメージが先行する街である。


 複合構造で入り組んだ高層建築が一見無計画に地上から伸びる様子は鉄の粘菌類が育っているようでもある。


 さて、そんな複雑怪奇な街の一角に、普通の人間であれば立ち寄らない場所がある。


 と言えば、普通の方はアンダーグランドな雰囲気を思い浮かべると思うのだが、この一区画はまったく様子が違っていた。むしろ通りのライティングは明るいし、店だってひしめき合っている。明るい音楽が流れ、さまざまなモニターが派手な原色・・を映し出していた。


 もともと日系の人間が多く集まっていたコロニーにはなぜか、本屋ばかりが並ぶ。ただしセントラルに住む人間がイメージする本屋とはだいぶかけ離れていた。まずもって、本棚には漫画しか並んでいない。それだけでも異常事態だというのに、この地区にある店の店頭には、驚くほど肌色なイラストばかりが掲げられているのだ。しかも見た目の年齢が割と際どい。


 どうやらゲームの販売をしているフロアもあるようなのだが、残念ながら18歳未満の立ち入りを禁止しているので、中の様子はリポート出来ない。


 通りは大きく3本あるらしく、中央の1本は、男性が喜びそうな肌色が多めの本屋。一本裏の通りは、突然PCパーツを売るショップが並ぶ。あまりにも唐突で声も出ない。なにやら妙にマニアックな部品ばかりが並ぶ。今時半田ごてで固定する抵抗部品など誰が使うというのだろうか……。


 逆の通りに出ると、今度は女性が喜びそうな肌色多めの本屋が一気に増える。本屋ではあるが、映像なども扱っているらしく店頭には妙に耽美な男性達が妙に薄着でスポーツに励んでいるカートゥーンが流されていた。


「アニメです」


 ……え?


「この素晴らしい文化を間違えるとはあなたはゴミですか?」


 問答無用でナレーション・・・・・・にツッコミを入れてきたのは褐色の肌で小中学生くらいに見える半目の三白眼の少女であった。


「キャラ説明ありがとうございます。前話を読んでいる人に対しては無用の配慮だと思いますが」


 いやいや、説明しないわけにもいきませんし……。


「みな記憶力がナマコ以下なんですね」


 ……。


「とりあえず話を戻しましょう。これはアニメです。アニメーションという言い方も微妙だというのに、よりにもよってバタ臭いカートゥーンと一緒くたにされるなど何という屈辱でしょうか。貴方の頭をかち割って臭そうな脳みそを捨て去って良いですか?」


 怖いよ! バラッティさんってそんなキャラでしたっけ?!


「そうやって名前を出して説明しているんですね。わかります」


 メタ発言はお控えください!!!


「ふう……キャラクターの性格も何も、前回などシャノンさんの胸を揉んでいただけですし、わかりようもありませんではないですか。トンボ以下の脳しかないんですね」


 酷い……。


「まぁ貴方が無能出あることはわかりましたので、訂正をお願いします」


 は、はい……。


 えー……。店頭にはアニメが流されていた……これで良いでしょうか?


「まぁ良いでしょう。次間違ったら脳みそをマル●メと入れ替えますからね」


 大豆発酵!


 ……と、とにかく……、そういうお店から出てきたのはインド系ロリ美少女のバラッティ・ベーグムだった。見た目は幼いが立派に結婚が出来る年齢である。ただしまだお酒を飲める年齢にはちょっと足りない。


 彼女は紙袋を一つずつ片手に提げているのだが、その紙袋の絵柄がまたカートゥ……アニメ調の美青年が妙に色っぽい流し目をしている肌色多めのイラストがダイナミックに印刷されているという代物だった。さぞや目立つ事だろうと思うのだが、誰も感心を持っていない。いや、不思議な事にその通りを歩く大抵の人間が似たような紙袋を提げていたのだ。朱に交われば赤くなるという事……なのか?


 彼女の紙袋の中身はなぜかやたらと巨大な箱に入った映像メディアだ。メディア媒体など、小指に乗るような物が主流の世の中で、どうしてこんなに非効率なパッケージをしているのか理解に苦しむ物だが、彼女たちにとって、この「初回限定版」を手に入れることこそがステータスなのだ。ジャスティスなのだ。


「閲覧用、布教用、保存用、シャノンさん用……うん。全部あります」


 彼女の購入物はなぜか同じ物が4つずつ揃っている。意味がわからない。


 バラッティは妙に薄っぺらい漫画本を手に取って、口元を歪める。


「シャノンさんも早めに染めてしまいましょう」


 おすすめした本は律儀にも必ず最後まで読んでしまうシャノンにつけ込んで、妖しい漫画やビデオを貸しまくるバラッティ。

 こしてシャノンは無駄かつ余計な知識を増やしていくのであった。


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