猫村まぬる

世間と人生に希望を失った中年男性が、野薔薇の咲き乱れる真夏の山中で、戦前さながらの民家に暮らす和服の少女に出会って始まる、幽玄で珍妙な凸凹コンビの物語。古典的幻想怪異譚の世界と、身…続きを読む

　これぞSF!　と思わせる、カッコよくてどこか懐かしい小道具を、これでもかとばかりにぎゅうぎゅう詰め込んだ痛快SFアクションです。一話完結の短編ですが、その背後に一大シリーズ物スペ…続きを読む

１篇１行の、極限まで短いショート・ショート。背筋がひやりとしたり、ぞわぞわするような、うすら恐ろしいものがほとんどです。個人的には、なぜか奇数番の作品が好きです。

　夏休みの終わりに、少年が出会った男。文字通り「雲をつかむような」生業で身を立てているらしい、ひょうひょうとした不思議な男に、少年は心をひかれます。 　いつだったか、何年も前の夏の…続きを読む

ポエニ戦争を主題とする、共和制時代のローマを舞台とする短編です。短編でありながら、古典古代の堂々たる英雄伝として大河小説の趣すら感じさせます。ラストがお洒落。

この小説がわたしたちの前に差し出すのは、わたしたちの世界に似ていて、だけどもっと不可解で静かな世界の、ほんのひとかけらです。わたしたちもまた彼らのように、複雑で寂しく、全体像など把…続きを読む

化け猫娘再登場。前作とは大きく語り口を変えた続編ですが、こちら単体でも楽しめる魅力的な短編となっています。是非一度この島を訪ねて化け猫まつりを見てみたいものです。

不気味で不条理でユーモラスで、でも人間とネコの関係の本質的なところをついているようでもあって。ぶっとんだ設定に軽快な文体もあいまって、楽しく読める短編です。でもいちばんぶっとんでる…続きを読む

ここまで細密に描ききることは、並大抵の筆力でできることではありません。ぎっしりと文字の詰まった画面の視覚的効果もまた、息の詰まるような年代を生きている少女の心のうちを、生々しく感じ…続きを読む

高校を舞台にした、ノートと告白をめぐる日常ミステリーです。派手なトリックも複雑な謎解きもありませんが、主人公の探偵少女ぶりはなかなか鮮やかで、解決までの過程が面白く、登場人物がみん…続きを読む

亜熱帯の国の近世を思わせる舞台を、駆け、踊る、魅力的なキャラクター。読者の目を射る、鮮やかな光と闇、鋭い痛み、底知れない悪意と慈愛、孤独と友愛、そして世界への畏れ。物語の内容につい…続きを読む

わたしもこういうメタ的な実験がやりたいなと思ってた時期があるんですが、頭の構造に合ってないみたいであきらめました。あきらめて良かった。こういうふうにシンプルでコンセプチュアルでエン…続きを読む

　ヒロインの心情が丁寧に描写された、素敵な短編小説です。文章も、登場人物も優しく、作品の世界そのものが、優しい安心感にしっかりと支えられていて、不安感すらも心地よく感じてしまいまし…続きを読む

　忠臣蔵といえば、江戸時代以来、日本人の文化史、精神史のなかで重要な地位を占めてきた古典ですが、価値観の変化にともない、ここ１０数年あまりで急速に忘れられつつあるようにも思います。…続きを読む

　超能力を小道具にした、ひねりの効いたミステリーなのですが、にもかかわらず読みやすく、楽しめる短編に仕上げられています。 　超能力者と言っても、超人的なキャラクターによる「超能力者…続きを読む

全てが否定文で書かれた短編です。小品ではありますが、なかなかの力技です。こういった実験的な（レイモン・クノーの「文体練習」を連想しました）試み、大好きです。

　５０話でひとまず休止ということで、レビューを書かせていただきます。 　おそるべきアイディアの宝庫、としか言いようがありません。ひとつひとつ趣向が違い、おもしろく、感嘆する他ありま…続きを読む