化け猫ユエ

作者 帆多 丁

55

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★★★ Excellent!!!

まず文章全体に漂う『和』な雰囲気に浮いてる『西洋』な主人公が「たまらない」と感じましたね。このチグハグさ、小説全体で見れば言葉は非常に少ないものの「必要な分だけ置いている」と感じる文字の置き方や、ルビや言い回しなどで整えてある文体は読んでいて脱帽物です。

構築された世界は独特な雰囲気を残しながらも、あっさりと読みながら受け入れる事が出来る不思議な世界観になってます。

ストーリーに触れるとユエの過去、そして右目ことリール―の正体、「黒犬」や呪い師に依頼を頼む人々……全体的に仄暗さが漂いますが、それだけではなく夜に浮かぶ灯りのような温かさもしっかりと残しています。鏡の前での台詞が丁度いい塩梅でやってくるので、そこでじんわりとしたものを感じる人も居そうです。

ひとこと紹介にも書きましたが見た感想としては「こりゃ異世界だ」です。
また違ったファンタジーとしての形や新しい世界にワクワクしたい方にはお勧めできる作品だと思います。
うーん、これが15000字くらいしかないって事にビックリ。(続編もありますが)

★★★ Excellent!!!

なかなか見ない世界観に、妙に心が躍ったのは私だけではないでしょう。
とあるものを「目に宿す」少女を中心に描かれる物語。

猫の右目にヒトの左目。
大きな平笠をかぶった西方の呪い師、ユエ。

大きな平笠をかぶってるっていう時点で、かなりストライクでした!
舞台設定にかなりのこだわりを感じる世界観にとても魅力を感じつつ、キャラ同士の言葉のやり取りもまたよくて、またいい意味で「生々しい表現」が読者の心が動かすことは間違いなし!

東洋のあやかし物、ぜひご覧あれ!!

★★★ Excellent!!!

うまそうな平麺と、その市のぼってり蒸した感触に取り込まれて、最後まで一気読みしました。
人々の暮らしの様子がざらざらとした手触りと一緒に伝わってくるようで、魚醤の匂いのぷんと香る世界に足を踏み入れた気分になります。
一語一語、文章のリズムが精巧で小気味よく、作者様の文へのアティチュードを感じるとと共に主人公ユエの肩の力が抜けた調子が鮮明に思い描かれました。
下腹の居候のごとき食いしん坊で、「もう少し読ませておくれ」と言いたいところを、ユエに風のように笑われた、そんな素敵な読後感でした。

★★★ Excellent!!!

 独特のファンタジーが舞台で、それが雰囲気のある文章で語られています。
 そして主人公のユエが、その雰囲気に合った、独特の舞台ならではのキャラクターとして描かれているのが魅力ですね。

 最初は謎の少女として現れるユエ。
 そして話が進むうちに、右目の正体、下腹の居候の謎、ユエの抱えた悲しい秘密が明らかとなっていき、どんどんと彼女が好きになっていきます。

 彼女の幸せを祈らずにはいられない、そんな後味の作品ですね。

★★★ Excellent!!!

骨が軋むような音もなく、ただ削られ、失っていくユエの物語。

幼き傲りの代償で、人の身には収まりきらない三様の魂が、蝕んでいく。

リール―も下腹の居候も、ただの身体の機関というには、あまりにも意味が重すぎる。

生きて行く強さを感じさせる物語、ではない。

死へと向かう旅路に美しさを見出す物語、でもない。

浸食が進むたびに、喪失の伴うユエはもはや、次の瞬間にはユエですらない。

けれど、どれだけ失っても、見てくれているものがいる。

物語の重さとは不釣り合いに、鮮明な明るさが見えるのはなぜだろうか。

覚えてくれている誰かがいるのであれば、生きていられるのだ。

★★★ Excellent!!!

 旅の呪い師が、化け物退治を行う話。

 古来、旅をする者の物語とは、安住の土地を持たぬ者の物語。
 それは、大抵何かをしでかしたか、しでかされた人の話であります。
 誰かを助けることで、自分が失ったものを埋め合わせをしようとする、その哀しさと血風こそが、エンターテイメントの華。
 ここまで堂に入った物語を書けるなんてのは、ただ事ではございません。
 余りにおぞましくて、ワクワクする。いけない箱の蓋を開けてしまうようなドキドキを味わえる妖作です。

★★★ Excellent!!!

右目にもお腹にも何かがいる呪い師のユエ。彼女の、ある場所でのある仕事のお話です。

設定や世界観について、明かされていくことと引き伸ばされていくことの間で楽しく翻弄されながら読みました。
幻想的なのに、解像度がすごい。一文に込められた情報の量と、見えてくる世界の奥行に圧倒されました。
登場人物の動きひとつひとつに、その体がふれる空気の質感や質量までもが感じられ、こちらの身体感覚がまるごと作中に引き込まれるような読書体験でした。
仕事を終えたラストには、ユエの過去や、お腹の中の誰かとの関係も明かされます。
ユエのこの先はまだまだ不安を伴ったまま続いていくことに変わりはないのだけど、現時点での彼女の解答が前向きに明示され、物語は新しい未来の予感と共に幕を閉じます。

文章の持つ力を改めて実感させてくれる幻想的なファンタジー短編。ぜひ読んで、この濃密な物語世界を体感してもらいたいと思います。
あと、個人的に平麺の使われ方が好きでした。

★★★ Excellent!!!

亜熱帯の国の近世を思わせる舞台を、駆け、踊る、魅力的なキャラクター。読者の目を射る、鮮やかな光と闇、鋭い痛み、底知れない悪意と慈愛、孤独と友愛、そして世界への畏れ。物語の内容について、わたしがくどくどと解説すべきことは、何もありません。ご一読ください。ただ、文章の疾走感に惑わされすぎず、噛みしめながら読み進めることをおすすめしたいです。一文、一語にこれだけ多くの意味を託しつつ、ここまで無駄のない文章を書くことは、相当な手練れの書き手でも容易なことではないと、きっとあなたも舌を巻くことでしょう。

★★★ Excellent!!!

和の雰囲気が随所に漂う、物の怪の物語。

言葉の選びが秀逸なので、短い文言で鮮明な映像化の叶うストーリーでした。
右目に宿すもの。
腹の内に宿すもの。
そして、外側の彼女。
なにより本軸である『月が巡る』という言葉の、本当の意味とは──。

西洋めいた彼女の姿に、東洋のあやかしというもうこの文言だけで興味そそられる色濃い物語。
是非ともご覧いただきたいです。