〝ファンタジーに求める愉しみ〟の原液みたいな物語

 とある亜熱帯の国を舞台に、西方より来た呪い師『化け猫ユエ』が、危険な怪物退治に挑む物語。

 ファンタジーです。亜熱帯怪奇譚の名に偽りなし、和でもなければ洋でもない、まさしく〝創造された世界〟の愉しみを存分に味わわせてくれる物語。

 物語の舞台や登場人物はもちろん、呪やモノの怪などの「この世界の法則」に至るまで。丁寧に積み上げられた種々の設定の、その厚みと読み応えたるや!
 作中の世界そのものに途轍もない魅力があって、読むごとにぐいぐい引き込まれます。

 特に独特のおどろおどろしさというか、何かえぐみのようなものがお腹に溜まる感覚が最高でした。
 大まかな筋自体はシンプルな冒険譚、なんだったら迫力の戦闘シーンが山場だったりするのに、そういう単純なアクションとはまた別のところで首根っこを掴まれているかのようなこの読み心地!

 この辺の、本作そのものの持つ魅力はもう、数多あるレビューによって語られている通りなのですけれど。本作は短編連作シリーズの第一作であり、この魅力が全作品に通底している、という点がなおすごい。このレビューを書いている時点であと四作の「おかわり」が可能です。お得!
 読み終えるとわかるんですけど、確かにもっと他の冒険を覗いてみたくなる主人公で、そして期待したものがすでに用意されているんですから、なんとも贅沢な話です。

 化け猫と呼ばれる不思議な少女。彼女の抱えた運命と、その旅路の一端を、少し覗いてみませんか?
 とても素敵な物語でした。面白かったです!

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