緻密な「意味」で構築された濃厚な作品世界。あと、平麺。

右目にもお腹にも何かがいる呪い師のユエ。彼女の、ある場所でのある仕事のお話です。

設定や世界観について、明かされていくことと引き伸ばされていくことの間で楽しく翻弄されながら読みました。
幻想的なのに、解像度がすごい。一文に込められた情報の量と、見えてくる世界の奥行に圧倒されました。
登場人物の動きひとつひとつに、その体がふれる空気の質感や質量までもが感じられ、こちらの身体感覚がまるごと作中に引き込まれるような読書体験でした。
仕事を終えたラストには、ユエの過去や、お腹の中の誰かとの関係も明かされます。
ユエのこの先はまだまだ不安を伴ったまま続いていくことに変わりはないのだけど、現時点での彼女の解答が前向きに明示され、物語は新しい未来の予感と共に幕を閉じます。

文章の持つ力を改めて実感させてくれる幻想的なファンタジー短編。ぜひ読んで、この濃密な物語世界を体感してもらいたいと思います。
あと、個人的に平麺の使われ方が好きでした。

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化け猫ユエ

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