ただ綻びていく、喪失の化け猫語

骨が軋むような音もなく、ただ削られ、失っていくユエの物語。

幼き傲りの代償で、人の身には収まりきらない三様の魂が、蝕んでいく。

リール―も下腹の居候も、ただの身体の機関というには、あまりにも意味が重すぎる。

生きて行く強さを感じさせる物語、ではない。

死へと向かう旅路に美しさを見出す物語、でもない。

浸食が進むたびに、喪失の伴うユエはもはや、次の瞬間にはユエですらない。

けれど、どれだけ失っても、見てくれているものがいる。

物語の重さとは不釣り合いに、鮮明な明るさが見えるのはなぜだろうか。

覚えてくれている誰かがいるのであれば、生きていられるのだ。

その他のおすすめレビュー

遠藤孝祐さんの他のおすすめレビュー236