使い魔猫を片目に、子宮に魔女を。傘を被った呪い師はゆく。

胴布に筒袴。編笠を被った姿。米麺を啜り、水牛車に乗る。
東南アジアを思わせる文化の土地で、モノの怪退治を生業としているらしい主人公は金の髪に琥珀の目、そしてその片目は猫の瞳。彼女がこの亜熱帯の土地にやってきたのには、わけがあって――

描かれる風景はたしかな土の香りがし、呪術の仕組みの土俗の気配。対するそれに絡む主人公のバックボーンはしっかりと土台のある西洋魔法物語のそれで、その緻密さが世界の広がりを感じさせます。
主人公、ユエの抱える事情は重く、失うものも多いだろうことを想像させつつも、片目に宿る相棒との掛け合いの軽妙さでするっと読まされてしまいます。
リールーの頼もしさは素晴らしく、この王族猫が相棒で、覚えていてくれることがなんと心強いのだろう、とどれほど思わされたことか!

起こる事態も一捻りが効き、事件のさなかに主人公が口にする口上の、女性の体の仕組みへの優しい目線の心強さと格好良さは震えるほど。

この作品は連作短編の一作目にあたり、主人公の足跡を追って読み進めてもいいでしょう。

ユエと相棒の道行きを追いたくなること請け合いの作品です。


(「魅せる世界観×応援したくなる女の子」4選/文=渡来みずね)

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