「御伽噺症候群」を含む小説

「好きですよ、先生」 そう告げてみては、二言目には嘘ですと笑う。そうすることでしか、わたしは気持ちを告げられない。

「あなたの心臓をください」 中学最後の日。そう言って制服の第二ボタンを差し出した少女に背を向けてから三年。 大学進学と共に故郷の町へ戻って来た央は、少女──垣内みゆと再会をする。…

「付き合ってください」 「うん、いいよ」 おおきなおおきな、肉食獣みたいなおとこのひとに告白された。 七人兄弟の末っ子としてのほほんと育った私は、あんまり考えることなくうなずい…

鏡よ鏡、この世でいちばんうつくしいのはだぁれ？ 小さい頃から憧れてきた。御伽噺のなかの王子様みたいな人と恋すること。 だから自分を磨いてがんばってきたのに、ようやく見つけた理想の…

古には十六、いまは、二十に嫁いで行く一族の姫君を守るため、災厄払い――依子、と呼ばれる存在が用意される。 ひととせ、二重に、満ち、夜露のさき、いつかの時まで。 現代×御伽話アン…

王子様はなぜ姉妹の《姉》を選んだのだろう。同じ日に出会い、同じように時を過ごしたのに。たしかに姉は素敵な人だ。――だけど、妹の私だって王子様を好きだったのに。 童話「ゆきしろと…