概要
森、聖域、災厄、因習、呪い、身代わり、依子、神、婚姻、姫君――御伽話
古には十六、いまは、二十に嫁いで行く一族の姫君を守るため、災厄払い――依子、と呼ばれる存在が用意される。
ひととせ、二重に、満ち、夜露のさき、いつかの時まで。
現代×御伽話アンソロジー『フェアリーテイル・シンドローム』参加作品
ひととせ、二重に、満ち、夜露のさき、いつかの時まで。
現代×御伽話アンソロジー『フェアリーテイル・シンドローム』参加作品
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!純度の高い "願い" を感じた。
まるで詩のように、気持ちのよいリズムで綴られる物語、「きみのヘンゼルはもういない」の世界に魅入られていた。
この作品の情景描写はとても美しく、ある意味官能的で、それでいて感情的だ。
二人の複雑な想いや背景について、特に触れられていないのにも関わらず、冒頭で感情移入してしまった。
ただ、複雑な背景とは裏腹に、何を想っているかは、とてもシンプルなのだろうと思えた。
きっと二人は「離れたくない」のだろうと。
***
特に驚いたのは、よつとひめさまが想い合っていることに、何の違和感もないことだった。
本来であれば、この二人がどういった背景があって、この関係に至ったのかがわからなければ感情移入…続きを読む - ★★★ Excellent!!!まっさらな和紙に碧と藍の水彩で書かれた詩のような
独特のひらがなの使い方、擬音のやわらかさ、そして多用される連体止め、何もかもまるで詩で、読み終わってこれは感情をうたわぬ叙情詩だったのだと思います。
そこかしこに「よつ」の、そして「ひめさま」の想いの強さ、溢れんばかりの気持ちがほとばしっているのに、実は直接的な感情表現に通ずる形容詞は少ないという、芸術作品です。
文芸、ということばがありますが、この作品を読むと、文章はアートたりうるのだと思います。
触れる行為や求める感情は、同じシーンを他の方が書いたらひょっとしたら官能的な描写になるのかもしれませんが、「よつ」と「ひめさま」の間にあるものはきれいで、美しく、繊細で、上品で、この世界は完成さ…続きを読む