「言えやしない……」を含む小説

十四歳の夏休み、僕は自転車のペダルを漕いで丘の上の老人ホームへ向かった。戦争体験者の話を聞くという、誰もやりたがらない宿題のために。 九十三歳の山崎さんは、南方の島をダイヤモン…

異世界へと召喚されたとある国の青年は、勇者となって国を救う使命を与えられ、遂に魔王の元へ辿り着いた。けれど彼には、誰にも言えぬ秘密があった。そしてそれを共有し、ぶつける事ができる…

　高校三年の冬。 　引っ越しを控えた私は、部屋の片隅にある古いクローゼットを整理していた。 　奥の箱から出てきたのは、三年前の手紙。差出人は「私」ではなかったけれど、宛名は――“…

夏祭りの終わりに芽生えた恋は、秋の夕暮れに静かに砕けた。 まっすぐに想いをぶつけた少年、誠実に断った少女、そして隣で支え続ける幼なじみ。 三人の歩幅が少しずつずれていく季節に、残…

俺、山野井みことは、高校進学そうそうにくじ引きに負けて、学級委員となった。 学級委員だからと担任からの頼みを断りきれず（何しろ俺は優柔不断）、不登校少女、鈴野琴音の家にプリント…

皆さん「吸血鬼」ってご存知ですか？ 失礼。知らない人の方が少ないですよね。 では「吸血鬼は太陽が苦手」というのは？ コレまた失礼。有名な話で当然の知識ですよね。 けれど実は「…

列強に分割統治された日本。 空白地帯として、世界有数の貿易都市ならびに犯罪都市と化したトウキョウでは、『我楽多』と呼ばれる半端者のアウトローもどきが報酬目当てに駆けまわる。 「…

辺境の診療院で孤児や旅人を癒していた青年治癒師セレスは、ある夜、突如現れた黒い召喚陣に呑み込まれ、魔王アレクシスの玉座の前に連れ出される。 「多年の誓約に従い、おまえを我が花嫁と…

夜が静かに崩れ落ちる時、あなたは夢の中にいた。 夢とは言っても、普通の夢ではない。視界の輪郭はぼやけ、異界の温度が肌を撫でるようだった。空気は薄く、冷たく、耳鳴りのように「響」が…

仕事に追われ、恋愛から遠ざかっていた35歳の会社員・翔。 ある雨の夜、ふと立ち寄ったカフェで、ノートに向かう女性・美咲と出会う。 小説家を目指す彼女との何気ない会話は、やがて翔の…

初めにこの作品の主目的は、読んで楽しむ事ではなく、他人が自分の事を大事にしてくれない事に慣れる事にあります。 何故そんな事が必要かと言えば、日本の経済状況が悪くなっていく材料が溢…

　私の主人は他人の心の解らぬ人でした。子爵家当主としてそれが褒められるべきことか貶されるべきことか、それは一概には言えないでしょう。しかしながら結果として子爵のその特徴は、特長で…

悲しみ、喜び、痛み――。 人の数だけ存在する心の声を、ほんの1分で覗いてみませんか。 心の奥底に眠る「誰にも言えない本音」を描くショートストーリー集。

強力な霊能力を持ち、幼いころから幽霊が視えていた彩瞳真名(あやめまな)。 しかし、それは家族にも言えない彼女の秘密。自分だけが持つ特異な力に日々悩まされていた彼女は凄腕の霊能者の…

高校三年の夏、彼は転校生として現れた。 どこか浮世離れしたその少年は、日々の風景にどこか違和感を抱きながらも、クラスメイトと過ごす日常に溶け込んでいく。 そんな彼の前に現れたの…

黄昏がほどけ、夜が降りる大阪駅。広場、売店、連絡通路、ホーム——偶然居合わせた六人は、誰にも言えない傷を抱えていた。親子の不和、衝動的な盗み癖、友の死、数字にすり減る笑顔、肩書き…

50歳になる槙野。これと言って 目立つ事もなく、どちらかと言えば 不幸せな人生と思う日々。 ある日、たまたま通り掛かった1軒のカフェで不思議な体験をし 自分の人生を見つめ直す切っ…

飢饉・疫病・内紛……そして勇者。 様々な脅威に晒され続けているアーシア国。 先代君主の座を引き継いだセイドーは、定期的に実施される異世界召喚の儀を毎回楽しみにしていた。異世界か…