なんとなーく泣きたい、感動したい。そんな気持ちになることってありませんか? 今日は、そんな時に手に取ってもらえるような4作を、ユーザーのみなさまのご助力により選定して参りました!
ほっこり泣ける作品から、心が震えるような人間ドラマまで、お話の幅もさまざまなら、作品の舞台設定も、日本の平安末期からサファヴィー朝時代のイランに飛び、ねずみの暮らす絵本の世界ときて三途の川のほとりにある食堂にたどり着く、時間も空間も飛び越えた個性豊かな作品の集まりとなりました。
取り上げている4つのレビューも、感情が揺さぶられているさまが伝わってくるような筆致で、どれも素敵です。ひとたびレビューを読んでしまえば、あなたは本編を覗かずにいられないでしょう……!
また、イチオシレビューをご応募下さったみなさまも、誠にありがとうございました。たくさんのご応募をいただきまして、担当としましても、個人的にいくつもの作品をチェックしてしまいました。
いずれ「教えて!あなたのイチオシレビュー!」が開催された折には、ぜひまたおすすめ作品をシェアしてくださいね。
それでは、今回も珠玉の作品群をお楽しみくださいませ。
カクヨムをやってて良かった……。
満足の溜め息と、涙が滲む目元を押さえながら読了しました。
平安末期、平清盛の甥である「教経」と彼を慕う女性「玉虫」の物語です。
恋の始まりからその結末までを、大きな時代のうねりを感じながらお楽しみ頂けます。
英雄的な人物の活躍を描く軍記物語というよりは、あの時代に生きた人々の人間ドラマが丁寧に綴られています。
情景も、人物達の心情も、選び抜かれた言葉できめ細やかに表現されていて、どんどん惹き込まれ、心が震えました。
平安宮中の様子を描くのがとても巧い作者さんなので、源平時代が気になる方だけではなく、平安の恋物語が好きな方も大いに楽しめる物語だと思います。
是非読んで頂きたい一作です。
皇帝になれなかった王子は死ななければならない。
生まれながらにそんな運命を定められた王子バヤズィット。
最後に残った一歳上の兄の取り巻きにより、望まぬままに反旗を翻した形になり、国を追われ、敵国の王の下に保護される。
多額の身代金と引き換えに優雅な軟禁生活を送りながら、その王と過ごすうちに、死ぬことなどなんとも思っていなかったはずの彼に変化が起きていく……。
定められた死の運命に、面と向かっては逆らわず、
俺の死は悲劇なのだが、俺はそれを笑う。
俺は凡愚だが、やっぱり特別な凡愚なのだ。
それは譲れない。
と、その死と向き合っているようで向き合っていない彼に、特別な死などない、むしろ地震で死んだ平民だって非業の死だと突きつけながらも、優しく見守ってくれる王との対話で物語が進んでいきます。
非常に重いテーマなのに、基本的には軽妙なバヤズィットの語り口調のおかげで暗くなり過ぎず、というかむしろところにより爆笑してしまうのに、それでも彼が本当に「生きたい」と気づいた時の叫びなどは本当に胸を打たれました。
いつ死んでもいい、というのは生きるということについてわかっていない、という彼の言葉がぐっさり突き刺さります。
運命に抗わず、それを受け入れながらも変わっていく彼と、それを見守る王のなんとも美しくも切ない最後のシーン。
穏やかなのに、どこかぴんと張り詰めた糸のような、そんな印象を受ける素晴らしい作品。凄いものを読んでしまったなあと思いました。
おすすめです!!
最後まで読ませていただきました。
こちらの物語は、大学生の「マサシ」という男の子が主人公で、ひょんなことから可愛いねずみたちが暮らす絵本の世界へ行ってしまうお話となっています。
その世界でマサシはねずみたちと、いわゆるまったりほのぼのスローライフを過ごすのですが、後半はもうびっくりな展開で思わず最後まで一気読み!!
前半でも時折、マサシの悲しい過去や思い、苦しい現実や葛藤など挟みこまれていますが、後半はスローライフからの一変!
私達が暮らすこの世界に置いて、色んな理不尽があったりしながら、誰もがマサシのような思いや苦しみを味わい、その人間的な悩みに、かなり共感出来、自分ごとのように感じ、涙無しでは読めませんでした。本当に号泣ものでした。
この怒涛な後半は、絵に描いたような前半のスローライフが見事に生かされており、思わず唸ってしまうような細かい風景描写や心情描写にすっごく意味を感じ、なるほどなーとすごく感じてしまいました。
そのスローライフで、また見事に『地球の未来』を描かれており、近い将来もしかしたら訪れる未来をSF小説のような形でも表現されており、作者さまの力量がとても光っている作品でもあるなと思ってしまいました。
また食べ物の魅せ方もとても素敵で、スローフード的な優しい食べ物をすごく食べたくなってしまいます。そして「いただきます」「ご馳走さまでした」の言葉の暖かさなど、私達が何気なく見落としいる小さな幸せの全てを事細かに書かれており、作者さまの小さな物事に対する思いや美しい繊細さがとても伝わって来て、幼い子供が読んでも素敵な物語だなととっても思います。
大人が読むと、「そうだったな」と再確認できるような、どこからでも小さな幸せを見つける事が出来るという教訓のようなお話がすごく優しく書かれており、読んでいて本当に心が温まります。ここまで気付けて、物語として成り立たせることができる作者さまに脱帽です。
特にラストが本当に大好きで、マサシの心情の変化や周囲の変化にとても勇気をもらえ、本当に明るく前を向ける作品となっています。
誰もがこの現実で、マサシのような苦しい険しい道を通ると思います。
だからもっともっと多くの方達にこの物語と出会ってほしいなと思います。
読めばもしかすると何かが変わるかもしれません。
それが些細なことであったとしても。
確実に一歩踏み出せる何かがここにある素敵な物語です。とてもおすすめです。
三途の川。
それは人が死ぬ前に渡るという、彼岸と此岸を分ける川。
そのほとりに建つ、一見ごく普通の食堂——「三途の川のホトリ食堂」なる場所が舞台のお話です。
ここで店主として働く明朗な少女サエと常連客?篁の前には、いつも同じような境遇のお客様が訪れます。
彼らは揃って皆同じ。
様々な事情から命を落とし、黄泉の国へと旅立つために三途の川へやってきてしまった人間たちなのです。
サエのお仕事は、これからあの世への長い長い旅路を歩く人々に「食事」を振る舞うこと……
現在公開されているお話がプロローグといった感じでしょうか、最後にはじんわり涙が滲んでしまいました。
思い出を味わった「彼」のこれからの長い黄泉の国への旅路は、きっともう大丈夫でしょう。
心温まるお話を是非ともご一読ください!