十一月に入り、読書の秋かと思いきや、冬の気配を感じる季節になりました。毎年、秋があっという間に過ぎ去り、「秋っていつだったんだろう?」と感じてしまう担当です。外の空気がひんやりとしてきたこの季節、布団にくるまりながらぬくぬくと本を読むのも、また格別な楽しみ方ですよね。今年は「読書の冬」にしてしまいましょう。
 さて、今回の特集テーマは「天才キャラが魅せる物語〜ミステリーからファンタジーまで〜」です。こちらはDiscordのテーマ募集企画で皆様からいただいたアイデアをもとに決定しました。ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。
 天才たちが織り成す世界は、私たちが普段想像できない次元で物事が動いているようで、とても魅力的ですよね。今回は、そんな天才キャラクターたちが活躍する、さまざまなジャンルの作品を集めました。天才発明家のおじいちゃんと孫が異世界でおばあちゃんを探す冒険物語、人見知りな天才薬師の成長を描いた物語、ゲーム理論で犯人を覆すミステリー、学校一の天才美少女の先輩に恋をする少年のラブコメの4作品です。ぜひ、お楽しみください。

ピックアップ

じじまごの愛でほっこりしちゃう!とにかく明るい異世界冒険物語

  • ★★★ Excellent!!!

主人公桐生貴虎はじいちゃんをとんでもなくリスペクトしている。腰を痛めているじいちゃんの世話をするため仕事をやめ、ストリーマーになっちゃうくらい。

このじいちゃん、確かに凄い発明家らしい。時空を越える装置を作っちゃうんだから!
生配信で視聴者に見守られ、行方不明になったばあちゃんを捜す旅に出た貴虎とじいちゃん。辿り着いた異世界で、じいちゃんから明かされたとんでもない秘密!

じじとまごの愛が素晴しすぎる。「じいちゃんの為なら何でもするぜ」という貴虎と、大切な選択は孫に委ねるじいちゃん。二人の関係がほっこりした気持ちにしてくれます。

ストーリーのテンポも絶妙で、ぐんぐん読み進めたくなります。現実社会から異世界へ移行して、その世界に違和感なく引き込んでくれる筆力もお見事。貴虎の得意なことが異世界の魔法に活かせるという設定は拍手喝采!

「とにかく明るい異世界冒険」と概要にありますが、本当にその通り。十九話を読んだ時点でこのレビューを書いていますが、続きが気になって仕方ない!

楽しい気持ちにしてくれる異世界ファンタジー、お勧めです!

人見知りな天才薬師が、自分の居場所を見つけるお話

  • ★★★ Excellent!!!

天才薬師・エリンは、叔父の家庭内暴力ともいえる所業によって、人間不信に陥ります。
そんな折り、理不尽な理由で叔父から工房を追い出され、独り街をさまよう中、クロエという少女に出会います。

商人を目指すクロエと、彼女の仲間である用心棒・マイラ、そして、オーナーかつ剣士でもあるミラベル。
彼女たちとの出会いによって、薬師として働くことになったエリンは、そこで少しずつ心をほどいていきます。

商人を目指して、たくさんの仕事をこなすクロエの姿。
用心棒かつ拳闘士として活躍するマイラが、ミラベルと行動を共にする理由。
ミラベルが薬師工房を立ち上げたきっかけ。

彼女たちの人となりを知り、今までになかった世界で生きる中で、エリンは薬師として自分に出来ることを一生懸命こなしていきます。
その結果、彼女の頑張りは仲間はもちろん、街の人たちからも認められていき、人見知りで臆病だったエリンは少しずつ変わっていきます。

このように、本作は、天才少女が無双して悪役にざまぁするようなお話ではなく、育まれる人間関係と変わりゆく主人公の心情を丁寧に描写した作品となります。

それぞれのキャラクターが生き生きと描かれ、主人公と対照的な薬師工房の仲間たちとの交流が、非常に魅力的です。
人見知りのエリンが、仲間たちとどのように関わり、どのように変わっていくのか。
是非、本編を読んで、彼女の成長を確かめてみてください。

ゲーム理論的推理法を駆使する本格ミステリ

  • ★★★ Excellent!!!

証拠や証言に基づいて推論を重ねるのが一般的な名探偵の流儀である。しかし、それが完全ではない場合もある。
そんなときに、本作の教授が用いるゲーム理論的推理法は威力を発揮する。今回、ゲーム理論の考えを応用して最も確からしい犯人を推定するというのがとても新しく感じた。
論理性は十分であり、これも新たな本格ミステリの形なのだと思う。

ラブを見つけるのがとても楽しい。

  • ★★★ Excellent!!!

こちらは異世界ファンタジーの学園物、一対一のラブコメです。
魔法やダンジョンといった異世界要素と、現代を思わせる高度な文明で織りなされた世界が舞台となっています。

主人公は、学園の高嶺の花に恋に落ちた少年、ルーク。
ヒロインはその高嶺の花、恋愛どころかあらゆるものに興味がない塩対応の先輩、ブレア。
ルークくんはひたすら盲目に突っ込み、ヒロインのブレアさんはそれをあしらうだけ。
二人が絡むごとに、これ恋愛は無理では?と思わせます。

なのに、どたばたの端で。
その関係の進展が、幾度も垣間見えます。
二人の変化の萌芽が現れるときが、たまらないのです。

甘酸っぱい恋模様をしっかり描かれる作者様ですので、期待が膨らんでしまいます。
こんな二人が、本当に甘やかな関係になるのか。
とてもとても、楽しみです。


今日から更新間隔を上げられるとのこと。
現在、二章の真っ最中。
是非この機会に、最新話までお読みくださいませ。