エモい。カクヨムユーザーのみなさんはこの言葉、知っていますか?
 ――「エモい」とは「エモーショナルな感じがする」ということであり、「感情に訴えかけて来るものがある」「心が動かされるようだ」「情緒を感じる」「趣がある」「グッとくる」というような説明しがたい感慨を述べる表現。――(weblio辞書より)とのこと。……って説明文読んでも使いどころが分からないよ!!という方、ご安心ください。今回の特集が全て解決してくれます。
 過日行われた「カクヨム×魔法のiらんどコンテスト」受賞作品の中から「エモい」を「体感」できる珠玉のエモい作品を集めました。様々なニュアンスを含んでいて理解するのが難しそうな「エモい」の正体が、本特集の掲載作を読めば完全に理解できるはず。みなさんも今日から堂々と「エモい」を使ってください。

ピックアップ

辛い中でも成長を感じる心優しいお話

  • ★★★ Excellent!!!

桜の精の子供という設定の珍しさと、
二人に与えられた重要な使命に興味を惹かれて読み進めていきました。

不器用だった夜桜が新しい友人のお陰で自分の悪いところに気付いたり、
葉桜のお話では辛い展開があったけれど自分の良さに気付いたり、
二人の心の成長が、とても感じられました。

最後に登場した生まれたばかりの桜の精に希望が感じられて、
悲しいだけのラストではなくて良かったです。

「あなたがすき」、その想いが苦しい。

  • ★★★ Excellent!!!

物語は、死の報せからはじまる。
菜々子という幼馴染を失った聖良は、疎遠だったはずの彼女から、奇しくも最期の言葉を聞くことになった。留守番電話に残された「失恋した」という言葉は、菜々子の死が自殺だったのか、それとも事故死だったのかという疑問を聖良とわたしたちに投げかけた。

読んでいて非常に、心動かされた。
青春小説のジャンルが示す通り、高校生たちの剥き出しの感情がぶつけられるから。

聖良と菜々子、そして青井、三原。
永遠に重なることのない想いが、彼女たちの交わす「好き」という言葉の下で渦巻いている。
「好き」が何を意味するのか、人それぞれにまったく異なる(と思われないかもしれない)その感情が引き起こす深刻なすれ違いが、この作品に登場するキャラクターたちを打ちのめしていく。
見ていてとてもつらかった。
どの「好き」も、「恋」も、誰を傷つけるつもりもないものだったから。
悪人はひとりもいない。
ただそれぞれの在り方で生きている高校生たちが、互いを理解したいと切望しながら、本質的にわかりあうことの不可能性へとがむしゃらに近付いていく。その危うさ、あまりにも素直な感情が、端的な文章でもって真っすぐにぶつかってくる。
刺さる、響く。更新されるたび、すこし緊張していた。

わかりあえないということを知る、その孤独は、きっと彼らにはまだ不安すぎる。
だからこそ『恋を知らぬまま死んでゆく』のラスト手前のエピソードがあまりにも優しくて、わたしは涙が出そうだった。
そんな関係はこの世に存在するのだろうか?
存在していてほしいからと願うからこそ、わたしはこの作品がとても「好き」だ。
だってわたしはひとりで、他人と関わり合いながら生きているから。

彼ら、彼女らは相互理解の不可能を超えようと足掻いていた。
それこそが生きることだといえばそうなのかもしれない。
と、ここまで書いて胸に刺さる。

「――ああ、そうか。」

菜々子はもう、どこにもいない。
こうして気がつかされる、物語冒頭の決定的な死。
ようやくたどり着いた感情の先に、本当の断絶がある。
生きた人間なら、傷つけあって、苦しみながら、好きでも、好きじゃなくても、理解できなくたって、一緒にいられるのに。
菜々子は死んでしまったのだ。
何度も何度も、聖良とともに確認してきたはずのその事実を、はじめて知ったかのように衝撃を受けた。

とても端正な物語構成だ、なんて、読み終わってすぐは考える余裕がなかった。
それこそ、聖良のように、「恋しいのかうれしいのかさみしいのか幸せなのかわからないまま」、物語を終えるしかない。
他人と生きていくこと。何百遍も考えたかなしさを、さみしさを、不安を、正面きって突きつけられる。
その素直さ、率直さこそが、『恋を知らぬまま死んでゆく』が何よりも誠実で、素晴らしい作品であると思う所以だ。

読むほどに愛おしくなる、最後まで目が離せない!

  • ★★★ Excellent!!!

生きることを諦めた少女、真尋のもとを訪れたのは、死神。

「はじめまして。僕は死神です――」

そんな静かな衝撃を与えてはじまる本作。
愛おしく、切なく、どうしようもなく温かな読み応えのある作品でした。
ヒロイン・真尋の命が尽きるその時まで寄り添う死神の彼……その正体が分かればもう彼らの幸せを願わずにはいられないでしょう。

病気×死×ラブストーリーの組み合わせはずるいです。泣けてしまう。
読み進めるうちに2人がどうなってしまうのか目が離せなくなっていました。
読んで損はありません。
桜咲く春の日にひなたで本を広げて読みたいですね。ハードカバーでもソフトカバーでも文庫でも。とにかく本で読ませてください。

一見「よくある設定」をガラリと変える技巧派恋愛小説!

  • ★★★ Excellent!!!

突然死んでしまった愛する妻を救うために、主人公がタイムリープして過去を変える。

これだけ聞くと手垢が付きすぎてる感がありますが、そこは「仕掛け」の得意な作者様。ある要素を加えることで、後半に大きなどんでん返しが待っています。

カラクリを知ったら、その状態でもう一度頭から読みたくなる。技巧と趣向を凝らした秀逸な構成です。

作中の甘酸っぱい学生シーンや、どうしようもなく切ない描写もお見事の一言。読んでいくとどんどん作品の中に入り込んでいけます。

一気読み必至な恋愛小説、ぜひ皆様も驚かされて下さい!