この仕事がおもしろい! 「働くヒト」小説コンテスト

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応募受付期間: 2017年4月1日(土) 00:00 〜 2017年5月31日(水) 23:59

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この仕事がおもしろい! 「働くヒト」小説コンテスト

受賞作が決定しました

「この仕事がおもしろい! 「働くヒト」小説コンテスト」は 210作品のご応募をいただき、 選考の結果、30作品が最終選考に進みました。

 最終選考対象作品は、株式会社KADOKAWA 角川文庫編集部が選考いたしました。

「大賞」「優秀賞」は角川文庫より刊行予定です。

総評

このたびは、角川文庫「働くヒト」小説コンテストにたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。文庫編集部の編集者がみなで手分けして、一作一作、しっかり拝読しました。一次、二次と選考を進めるなかで、多くの魅力的な作品が見つかり、議論を尽くして、大賞1作、優秀賞1作を選ばせていただきました。選に漏れた作品のなかにも、キャラクターやエピソード、心理描写や会話などにキラリと光る評価ポイントを備えた作品がいくつもありました。

結果的に、作品世界のディテールやオリジナリティとなる「お仕事」の部分と、登場人物たちの成長や変化といった「普遍」とのバランスに秀でていた2作が受賞に至りました。まずは受賞作をよい本に仕上げ、一人でも多くの方に読んでもらえるよう努力してまいります。そこでしっかり成果を挙げ、再びこうした機会を得られますことを願っています。受賞作が刊行された際には、応援のほどよろしくお願いいたします。

角川文庫統括編集長 吉良浩一

この度は「働くヒト」小説コンテストに沢山のご応募をいただき、誠にありがとうございました。角川文庫がカクヨムと組んでの初めての試みでしたが、想像以上に多種多様な「お仕事」を題材にした小説が集まり、選考に関わった編集部員一同、とても嬉しく読ませていただきました。「仕事」というものに対して、それぞれ工夫を凝らしたアプローチがなされていて、お仕事小説の面白さや奥深さを改めて感じさせられました。

大賞は、水族館のイルカショーを題材にとった作品で、仕事を通じて主人公が人生を賭けられるものを見つけ、情熱を傾けていく姿に心を打たれました。優秀賞は広告会社を舞台にした作品で、リアリティあるエピソードを重ね、息苦しいほどの緊迫感を持って進行する物語に引き込まれました。両作品の雰囲気や切り口は全く異なりますが、どちらも生きていく上で切って離せない「お仕事」の苦楽やその魅力が存分に描かれており、エンタテインメント作品として読ませるものに仕上がっていました。今回惜しくも受賞には至らなかった作品にもそれぞれの美点があり、選考会でも様々な議論が飛び交ったのですが、総合的なバランスに優れていた2作が選ばれることとなりました。

改めて、応募くださった皆様、また読者選考に参加してコンテストを盛り上げてくださった皆様に心より御礼申し上げます。受賞作がどのような本となって角川文庫より刊行されるのか、ぜひ楽しみにご注目ください!(I)

このたびは「働くヒト」小説コンテストに、沢山のご応募をいただきまして、誠にありがとうございました。角川文庫というレーベルが初めてカクヨムの小説コンテストに参入するにあたり、応募テーマを「お仕事小説」に絞ったことで、果たして応募はどれくらい来るのか、また、どんな作品が届くのかなど、期待と不安が入り混じった気持ちで待ち侘びていました。しかし、いざ応募された作品をみると、とてもバラエティとオリジナリティに富んだ良作に溢れ、当初の心配は杞憂に終わりました。

そのなかでも、大賞と優秀賞に選ばれた2作は、「お仕事小説」としての圧倒的なリアリティと、エンターテインメント小説としてのリーダビリティを兼ね備えており、角川文庫として売り出すことの最終的な本の“カタチ”が想像できる作品でした。この2作が、どのようなカバーや帯をつけられて、完成された文庫本として刊行されるのか、ぜひご期待ください。

改めてこのたびはどうもありがとうございました。本コンテストに関わってくださったすべての方々に御礼申し上げます。(T)

大賞

22歳無職、ドルフィントレーナー始めました(時給820円)

Blind Blue

著者=旭 青春

 水産業と観光で栄える海鳴市。就職浪人1年目の蒼衣の元に、思いがけずその求人は舞い込んだ。

 ドルフィントレーナー。泳げる仕事なら長続きするかもと、軽い気持ちで面接に臨んだ蒼衣だったが--

 気位高い高性能無職《ハイスペックニート》が、1頭のイルカと出会い「仕事」の意味を見つけていく。

 水しぶきの舞う真夏。働きながらだって青春できる。暑い夏にこそ読んで欲しい青色の物語。

この小説を読む

講評
  • ドルフィントレーナーという仕事を通じて描かれる、喜びや悲しみ、葛藤と希望が、魅力的なストーリーに乗って爽やかに活写されていました。主人公が壁にぶつかりながらも前進していく姿とそれを支える人たち。イルカショーの描写のみずみずしさ。いずれも細やかでかつ迫力のある筆致で紡がれています。イルカが鮮やかに宙に舞いあがるように、「お仕事小説」というジャンルを飛び越えんばかりのスケールの大きさが感じられました。コンテスト開催時に掲げた「明日も頑張ろうと奮い立つ」ような、読後感のよい明日への活力が得られる良作です。(Y)
  • 今回の選考会ではダントツに評価を集めた作品です。ドルフィントレーナーという独自性のある題材、ただの素潜りの描写でもグッと引き込んで読ませるだけの筆力、物語の起伏の作り方、どこをとっても非常に力のある作品と言わざるを得ません。仕事を通じて自己実現をするというお仕事小説の面だけでなく、主人公の蒼衣がイルカとの交流を通じて成長する姿を描いている点では青春小説、成長物語の面も色濃く持っています。ただ一つ残念なのは、最後のあとがきによって物語の世界から引き戻されてしまったこと。読後感という点まで気が配ることができなかった詰めの甘さが、少し残念でした。(T)
  • 構成力、物語のサプライズ、リーダビリティの3つの要素が他の作品よりも、一際優れている印象を持ちました。ドルフィントレーナーという特殊な仕事を取り上げながらも、青春小説の一面もしっかりと盛り込んだ力量は大いに評価できると思います。バランスの取れた良作でした。(S)
  • ドルフィントレーナーとして成長していく主人公や、彼を取り巻く職場の同僚や友人ひとりひとりが活き活きと描かれていて素晴らしかったです。“ドルフィントレーナー”や“水族館”ならではの問題に直面し、成長していく主人公の姿はとても好ましかった。物語の最初から最後まで、彼を応援しながら読み進めることができました。ストーリーにも起伏があり、予想を裏切ってくれるようなサプライズも用意されていて、印象的な場面もたくさんあります。続編を読みたい!と思えるほど夢中にさせてくれる作品でした。(N)

優秀賞

限界を超えて働け。

PJ:アフリカ

著者=松本宙

20XX年の夏。
24時間の物語。

広告代理店の新入社員である松山はとあるプロジェクトの5度目のプレゼンに臨み、
クライアントから解決不可能と思えるオーダーを突きつけられる。
24時間後の再プレゼンに向けて、松山は東京のど真ん中を走り続ける。

ごくありふれた日常、ごくありふれた地獄、ごくありふれた希望の物語。

この小説を読む

講評
  • 「津島町をアフリカにしてください」。そんな想像を絶するいくつもの無理難題に主人公が立ち向かうさまを、たった1日という短い時間の中に詰め込んだスピード感のある物語です。“広告業界あるある”のシュールな笑いや、現実味のある嫌な上司の描写をうまく使い、主人公の置かれたどうしようもない状況、そこでのもがきをうまく読ませていたように思います。その反面、最後まで主人公の仕事に対するパッシブな姿勢が変化せず、心情の面でも変化がわかりづらかったのが惜しく感じました。主人公が仕事を通してどう変化したのか、なぜ変化したのかという点をもう一度考え、構成しなおすと、読者にとってより面白く読み応えのある作品に化けるのではないでしょうか。(T)
  • ブラック企業に務める主人公の孤軍奮闘を描いた作品だが、24時間というタイムリミットを設定し、読者を惹きつけることに成功していると感じました。滑稽かつハードルの高い要求を突きつけるクライアント、どこの会社でもいるような憎らしい先輩社員、包容力がある上司など、キャラクターの書き分けもできており、今後の作品に期待が持てる作者だと思います。少し安易な結末を用意したところは、今後の課題かと思われます。(S)
  • タイムリミットが迫る中での仕事環境と、小説の構成がうまくマッチしていて、自然と主人公に感情移入できるようになっていて面白かったです。リーダビリティが高い文体もこの小説に合っていると思いました。また、随所に嫌味のないユーモアが感じられ(そもそも「アフリカ」という要求に笑ってしまいました)、過酷な環境を描いている中で、読者がホッとできるのも魅力的です。欲を言えば、彼がなぜ最後の決断をしたか、彼なりのポジティブな理由があった方が良いかと思います。もう少し表現を工夫するだけで、これまで彼を応援しながら読んできた人にもカタルシスを感じられるラストになるかと思いました。(K)
  • 次から次へと主人公に降り注ぐトラブル。リアルすぎるほど生々しいエピソードの数々は、読むのが苦しくなるほどだが、でも次の展開が気になってつい読み進めてしまいました。物語の設定をわずか24時間に設定したことで、その緊迫感がさらに増して効果的だと思いました。ダメな上司や一緒に戦う仲間など主人公まわりの人物たちも非常に個性的でキャラクターが立っていて飽きさせません。「アフリカ」という単語をみなが真面目に語っているそのシュールさもうまく効いています。全体的にもう少し改行を増やすなど、読みやすさを心がけたらより完成度が高くなると思いました。(T)

受賞作に次いで評価の高かった
上位3作品

  • 講評
    • 冒頭の、田舎での情感溢れるお盆の風景、立川の雑多な街並み、牛丼屋での過酷な労働など、シーン毎での丁寧な描写に惹きつけられました。途中、ファンタジーな要素が入ってくるのですが、そこも違和感なく物語に溶け込んでおり、作者の筆力を感じます。「お仕事小説」として、主人公の牛丼屋でのアルバイトを緻密に書き込んでくださったのだと思いますが、祖父の話との親和性があまりなく、物語が分断された印象でした。個人的には、いとこの華と祖父との物語を主軸にしたほうが、いい作品になったのではと感じています。(F)
    • 非常に描写力のある著者だと感じました。しかし、読み手に最も迫ってくる、こまやかで生き生きとした(状況的には「ブラック」なのですが)お仕事描写は、主人公が働いている牛丼屋の物語です。牛丼屋の物語自体はとても面白いのですが、「夢見るエンジン」というタイトルで描かれるべき(と読み手に思わせる)、戦時中に祖父が飛行機を造っていたという物語と、上手く絡んでいないと感じました。立川という土地が共通しており血縁がある以上の繋がりを描き出してほしかったです。牛丼屋の物語も、戦時下の物語もそれぞれ佳いシーンは沢山あるので、思い切って別々の物語にしてしまうのも案ではと思います。(I)
    • 物語は、牛丼アルバイトのパートと戦時中の祖父のパートと、大きくふたつに分かれていますが、それぞれどちらも情景描写や感情表現などがとても丁寧に描かれ、非常に筆力のある作者だと感心しました。とくに牛丼屋のその過酷な仕事内容は、きっと実体験に基づくものだろうと推測されますが、牛丼の匂いが行間から漂ってきそうなほどリアリティ抜群でした。惜しむらくは、ふたつのパートがうまく融合できているとは言いがたく、それさえ成功すればひとつの物語としてさらに完成度が増すと思いました。(T)
  • 講評
    • 「組合の専従」を主人公にしたことで、会社組織を俯瞰で見ることができますし、様々な部署の仕事ぶり、ひいては「仕事をする姿勢」そのものに焦点をあてられて、今までの「お仕事小説」にはない新しさがあったと思います。文章に勢いがあり、主人公や周囲の組合幹部の熱を感じ、とても面白く読みました。敵対する外薗の嫌らしいキャラも立っていますし、梅宮という女性のツンデレっぷりも物語の中で生き生きと感じられました。最後のほう、視点人物が変わっていくところから「作者」が出てきてしまって、ラストがうまくまとまらなかった印象がありました。作品単体として、最終的な着地点が見られれば、よりよい作品になったと思います。(F)
    • 労働組合の中でも“専従”書記長を主人公にした話で、なるほど、組合は普段こういうことをしているのかと、知る喜びが得られる作品でした。とっつきにくい組織や法律の話も分かりやすく丁寧に書かれています。キャラクターも個性的で魅力的。なにより、専従書記長の仕事だけでなく、働く人たちはどんな悩みを抱え、何に価値観を置いているのかという、仕事そのものについて考えさせられる現代的な視点があるのがよかったです。一方で、専従書記長というネタありきという感じも否めないので、物語としてどう展開させていくかに課題があるとも感じました。(Y)
    • まず、労働組合の専従書記長という題材が目の付け所がとても佳いと感じました。普通の人はなかなか知ることができない、ちょっと特殊という印象があるお仕事で、それでいて今の時代にもあった題材であると思います。主人公も読み手と同じくらいの知識から現場に飛び込んで……という設定の物語なので、仕事の内容の描写を説明臭くならず盛り込むことが出来ています。文体は少し癖があり読み手を選ぶかもしれませんが、私は読んでいてとても楽しい気持ちになりながらテンポよく読み進めることができました。語り手の視点の変化には最初戸惑いますが、読み進めるにつれて意図がある構造と納得しました。物語の山場なども上手く設定できていますが、ラストが駆け足になってしまった印象があります。キャラクターの動きが、多少都合がよすぎるように感じる箇所もあるので、それぞれの葛藤などをもう少し書き込むとよいように思います。(I)
  • 講評
    • “地方競馬”というあまり馴染みのない世界を詳細に描けていました。その分野ならではのルールや特殊な用語を盛り込みつつも、読みにくくない爽やかな物語に昇華できていたと思います。物足りなかったのは、見せ場でもあるレースの場面のわかりやすさと躍動感です。レース展開がもっと把握しやすく描けていれば、よりカタルシスのあるシーンになったのではないかと思います。せっかく“お仕事”というジャンルの中で“勝ち負け”が明確にある職業を取り上げているので、その強みを活かせるような描き方を心がけてもらえたら、さらに面白くなるのではないでしょうか。(N)
    • 厩舎や競馬場など“お仕事の場”に関する描写は、自分の知らない世界を垣間見ることができる、お仕事小説の醍醐味を味わえて、面白く読みました。主人公が想いを寄せるヒロイン騎手、同期のライバル、対立する歳の離れた頑固な厩務員など、主人公を取り巻く人物配置もバランスが良く、青春成長小説としての読みどころもあった一方で、肝心の主人公が共感を寄せにくい人物像となってしまっていたのが残念でした。主人公の失敗や、周囲とぶつかり、悩み葛藤する場面が描かれていたのは良かったのですが、その先に何かしらの変化や成長を遂げていく姿がなく、ともすると主人公に都合の良い考え・行動が目に付いてしまい、社会人としてはやや幼い造形となってしまっているように感じました。この部分に気をつけると、読む人がより主人公に寄り添って楽しめる物語になるのではと思います。(I)
    • 五感に訴えかける描写が印象的で、競馬に詳しくない人にも勧めたくなる小説だと感じました。登場人物たちが自分たちの仕事にそれぞれ誇りを持っていることが伝わってくるのも良かったです。特に上遠田のキャラクターは魅力的で、篠山が彼に影響を受け、また閉ざされた上遠田の心に少しずつ変化を与えていく過程は読み応えがありました。一方で、話のキモである柳楽さんとの恋愛パートが、やや尻すぼみとなってしまっていることに勿体なさを感じました(河恩の小説内での立ち位置もやや曖昧なので、そこを整理する必要もあるかなと思います)。篠山の内面的成長に柳楽さんとの関係がどう絡んでいるのか、もう少し丁寧に描けると、ラストシーンの意味も変わってくるのではないでしょうか。(K)

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