（旧）人狗草紙　―山の子—

天狗の弟子で異能の剣士＜人狗＞の政綱は、放浪の中途、鳴海山で謎めいた美女に出会う。語り合う中で政綱は、六台山で起きた人間同士の争いが、神と人との争いへと発展したと知る。人間達は山の神を凶悪な妖だと信じ、討伐しようとしているという。政綱は、事情を確かめるために山麓の村へと向かった。

天狗の弟子である政綱は歓迎されなかったが、彼に関心を持った武士の元岡重任と官人の中原師春の協力を得て、神の住まう山の調査に取り掛かる。しかしその調査が難航する内に、山麓では人間達の争いが再燃し、政綱は合戦に巻き込まれてしまう。

事件の激化を憂慮した京都の香春探題は、人間同士の合戦と、神との抗争が同時に進行する山へ軍勢を派遣し、武力による一件の鎮静化を図った。合戦が昂じ、両者から敵視され、血を浴びながらも、政綱の…続きを読む