玻璃の音*書房

作者 水菜月

思いを、情景を描くために選び抜かれた言葉たちの力。——凄い。

  • ★★★ Excellent!!!

心も身体もどんどん変わっていく、そんな微妙な時代の少年の心をきめ細やかに綴った物語。

この物語の舞台である森での日々は、あくまでも静かに淡々と紡がれます。
その情景は、作者という存在を介在しないかのように——まるで、何処かの森のある冬と、そこに住む人たちの日々をまるごと描き写したかのように…全てのもののひそやかな息遣いが聞こえてくるほどの、透明に澄んだ世界が広がっています。
創作された世界であることを感じさせない自然な空気と、その世界へ引き込む言葉達の力。気がつけば、自分もその情景の中に立っている——そんな感覚に驚かされます。

少年の心のふわふわとした不安定さ。揺れ動くその思いは、選び抜かれた言葉によって形を与えられ、読む者の心へ届けられます。時に優しく、時には突き刺さるように。
少年が、成長に従い、少しずつ「男」という性を持ち始める。真っ白から、ごく僅かな色合いを帯び始める——そのグラデーションの美しさも見事です。

ここへいくら書いても書ききれない、この物語の魅力に溢れた空気。ぜひ多くの方に、この空気を味わってほしい。この森を訪れてほしい。そんな作品です。
新しい季節の物語、楽しみにしています。

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