玻璃の音*書房
水菜月
冬のものがたり
第1章 森の少年と檸檬
第1話 玻璃の音*書房
ぼくは 森に住んでいる
歩いてきっかり50秒のところに 玻璃の音*書房はある
焦茶色の古い木で造られたその本屋は
先代が硝子集めがすきで
あちこち種類のちがう硝子が使われている
*水晶 *非結晶質の物質 *きらきらしたもの
重い木の扉には 色のついた硝子がはめ込まれ
その日の光によって 違う表情を見せる
大きな窓は小道に面して 外からでも本棚がよく見える
木の枝が凍えそうに窓に映り
透明な風が身体を通っていく気配
硝子を叩く風の音が だんだんつよくなる
雪がやってくるのは もうすぐだ
彼女がグラスを置く コトリとした音
音たちは ぼくの 誰かの 遠い記憶を呼び覚ます
*
今日もぼくの本は売れていない
売れるとその日1日、代わりにレモンが置かれるから
ぼくは冬眠はしない
木の実を集める必要もない
言葉がやってきて 自分の中に集まるのを待っている
反対側に住む砂糖さんが
しかめっつらでやってきて 冬の本を買っていった
残ったのは、レモン
この上なく レモン色の
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