第2話 梶井#檸檬 そして柚子さん


玻璃の音*書房の本は、柚子ゆずさんが選んでいる

奥の住まいにも柚子さんの本棚があって

そこには書房とまったく同じ本が まったく同じ配列で並んでいる

いわば 双子の書房 だ


ぼくには 柚子*書房の方から 内緒で本を貸してくれる

お金のないぼくの私図書館 だ


  君はオトウトのようなものだから


柚子さんは好きな本しか置かない

内容もだけど 装丁が好みの本しか選ばない



ぼくは今日、「檸檬レモン」を借りてきた

柚子さんの一番のお気に入りの本だ


あの人が この本を読んでいたから 結婚したの


檸檬は短編集で、表題の「檸檬」だけじゃなく

「ある崖上の感情」を知っていたから

大正時代の西洋願望 ウィーンだけでなく

ベッドシーンという言葉が出てくる もうあの時代に

思いを馳せる 彼が生きた時代に


すきな本が同じということが とても大切だった


京都の丸善

本の山を作り 檸檬を乗せて 立ち去る男

それが 黄金色の爆弾であったなら






*今日の1冊 「檸檬」 梶井基次郎 

 大正から昭和初期の作家 31才の若さで夭折した

 病いのためか、文章には憂鬱さや危うさ それゆえの鋭さがある




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