第3話 クウヘンさんとロウライ



柚子さんのご主人の名は、空辺クウヘンさん という


玻璃の音*書房の奥には ちょっとしたカフェがあって

そこでクウヘンさんは

月兎印のポットで珈琲を入れてくれる


あたたかいキャラメル色の

放浪の いや 琺瑯のポットから上がる湯気


  豆を挽く音は すべてに優先され

  珈琲の香りは すべてを代表して そこに存在する


クウヘンさんがいない時は 柚子さんが

紅茶 あるいは ハーブティーを入れてくれる

だから2つのメニュウがある


柚子さんは珈琲を入れるのが下手なんだって

クウヘンさん曰く 愛が足りないんだよねって

何に対する愛かな


時々、柚子さんの焼いたお菓子が並ぶこともあるけど

ちょっと ちんまりしている

はじっこの少し焦げたところがすきだ



クウヘンさんの本業は カメラマンだ

東京で仕事をしていたが おじいちゃんが亡くなって

ここへ帰ってきた 花嫁をつれて


クウヘンさんは時折、 ロウレライという

レンズが2つ並んだカメラをもって 散歩に出かける

ロウライ、とクウヘンさんが訂正する






*今日の道具 月兎印のポット  野田琺瑯のだほうろう

 一つ一つ職人さんが手作りしている 昔ながらのホウロウポット

 これで珈琲を入れると 魔法がかかるとか かからないとか?



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