この世に溢れる理不尽も、悲しみも、ただ静かに見守るように。

読後のこの余韻に、しばらく浸りたい思いです。
長い時を生き、さまざまな経験を経て、古びながらも新たな主人を待つものたち。愛おしくて、時々クスッとさせられて、哀しくて。
読み終えて一番心に強く刻まれたのは、人間の浅はかさや愚かさでした。
常に目の前の利益しか見えず、取り返しのつかない後悔を性懲りもなく繰り返して、それでも、まともな反省などこれっぽっちもできないまま。救いようのない道を相変わらず闇に向かって爆走していく人間たち。
この物語に描かれたものたちは、もしかしたらどこかの静かな片隅でひっそりと、人類の最期まで見届けていくのかもしれません。それは天変地異なのか、それとも巨大な爆弾投下によるものか——
それは遥か先のことではないかもしれない。
この世のそういう底知れぬ哀しみを、作者の筆致は温かく包み込むようです。時の流れをただ静かに見守るかのように。

読めば間違いなく胸を揺さぶられる掌編集です。

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