無着色の人間模様。それは、自分を映し出す鏡になる。

まず、私は恋愛小説というものをこの作品で初めて最後まで読みました。なので、普段あまり恋愛小説を読まない者の感想として、捉えて頂ければ幸いです。

特筆すべきは主人公の弱さです。
正直に申し上げるなら、読み始めた頃はとても苦痛で、主人公の橘さんに対しても、もっとシャキっとしろよ!と何度も思いました。というか、それは最後までそうでしたが(笑

――ですが、読み進めていくうち。
主人公の持つ弱さや悩みが、かつての自分の体験や思考と重なっていることに気付きます。
主人公に対して感じていたイライラや不快感は、そのまま過去の自分への「もっとシャキッとしろよ!」だったわけです。

それに気付いたとき、この作品への見方はがらりと変わりました。人は誰しも、そうやって自分のペースで、少しずつ前に進んでいくものなんですね。

着色されていない、ありのままの人間模様を描くこの作品を通して、私は過去の自分を優しい気持ちで省みることが出来ました。

ありがとうございました。




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