リアリティのある「やり切れなさ」と「切なさ」

ドキュメントでないものを文字で表現する時、言い方が悪いがもの書きは「嘘」を如何に上手につくか、でセンスを問われる。
最近流行のラノベなどは「さすがにそんなの現実ではないだろう」というものを開き直って表現し、その突拍子のなさで読む人を驚かせて惹きつける手法で人気を博している。オレ様の拙作もそうなのでお恥ずかしい次第だが。

そして、この作品はそれとはまったく対照的なベクトルで描かれた文学性のある作品である。

失礼ながら内容は地味である。だがドラマのように、傷つきやすい人の気持ち、擦れ違い、恋の苦しさをリアリティ鋭く表現している。そのもどかしさに読者は苦悶しながら目を離すことが出来ないだろう。
作者の創作力の手腕は、おそらくそこらへんのワナビなど足元にも及ばない。
カクヨムの運営は間違いなく受賞の可能性を持った候補のひとつとしてこの作品を挙げるだろう。
少なくともオレ様はそう感じた。

作者にひとつだけお詫びしたいのが手放しで絶賛しながら3つめの星をつけられないこと。
それは文章力が低いとかの話ではなく、読んでいてやり切れなく、それがどうにもおさまりがつかない故なのである。
タイムスリップとかで過去をやり直すとか、空からUFOが降りてきて登場人物たちを洗脳し人間関係を矯正するとか、作品をブチ壊すようなハッピーエンドに無理矢理でもしてくれと言いたいが



…ありえないようなぁ。だが、この胸のモヤモヤを一体どうすりゃいいんだ、おい作者よ!(←お前、何様だよ)何とか出来なかったのか、この話を。ため息が出るような素晴らしい話だけにやり切れん。

頼む、何とかしてくれ。いや、書いた責任があるだろう、何とかしろ。いいな、わかったな、お願いします、この通りです。そうしたら星もうひとつ付けるから!

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