「夜」に逃げ込んで、「朝」に憧れて、「時間」を追い掛けて

ミヒャエル・エンデの『モモ』を思い出した。
小学生の頃に読んで、「時間」というテーマに心を惹かれた。
正直に言うと、当時の私には難しくて十分に理解できなかった。
今でも、「時間」とは何かと問われても、うまく答えられない。

本作はSFと銘打たれてはいるけれど、とてもやわらかい。
辺境の小さな地球型惑星を舞台とする日常ドラマが主調で、
辺境ゆえのローテクノロジーぶりが、ほのぼのしている。
登場人物は等身大で、そのへんの居酒屋に紛れていそうだ。

その惑星は月と同じように自転と公転の速度が一致している。
常に同じ半面が太陽型恒星に相対し、日は昇りも沈みもしない。
だから、人間が「夜粒」を使って「朝」と「夜」を創るのだ。
主人公コヒナタは3年前から「夜」を管理する機関に勤めている。

毎日必ず同じ時間に同じルートを走り続ける生物、ジカン。
コヒナタが仕事に手間取る日に現れる、黒ずくめの「人夜」。
時代遅れな巨体マシンによって管理され増殖する「夜粒」。
そして100年後の未来に語り継がれる、朝と夜の誕生秘話。

のんびりとしたコヒナタの恋を見守りながら楽しむ、
すこしふしぎですこしファンタジーな物語の行方。
ジカンが来たら、私まで何だか嬉しくなった。
飄々としたミナトとお酒飲んだら楽しそうだな。

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