メルヘンチックなSFです。純真な登場人物が織り成す物語。
主軸は主人公とヒロインの初恋物語みたいで、そこんとこは安心して読めます。遠い星の物語でも、男女の鞘当ては基本同じなんだなぁと。
「夜粒」の設定が面白いと思いました。舞台設定の1つのツールなんですが、最も重要なツールでもあり、「夜粒」に関する背景が暴露されると「えっ!」「へぇ」「へぇ〜」と読者は声を漏らしそう。
「ジカン」の存在も面白いですねぇ。「ジカン」と朝と昼の関係が非常に面白い。ヒロインと「ジカン」の関係を深掘りすると、もっと面白くなると感じました。最後は、人智の及ばぬ存在だから…と、まぁ納得しました。
丁寧な記述で、全体的にストレス無く読み進められます。一気読みする方も多いのでは。私は通勤電車の中で読むので、そうは行きませんでしたが。
読んでいて、坂水さんの「宇宙の缶詰」を思い出しました。本作品の雰囲気を気に入った方には是非お勧めです。
ミヒャエル・エンデの『モモ』を思い出した。
小学生の頃に読んで、「時間」というテーマに心を惹かれた。
正直に言うと、当時の私には難しくて十分に理解できなかった。
今でも、「時間」とは何かと問われても、うまく答えられない。
本作はSFと銘打たれてはいるけれど、とてもやわらかい。
辺境の小さな地球型惑星を舞台とする日常ドラマが主調で、
辺境ゆえのローテクノロジーぶりが、ほのぼのしている。
登場人物は等身大で、そのへんの居酒屋に紛れていそうだ。
その惑星は月と同じように自転と公転の速度が一致している。
常に同じ半面が太陽型恒星に相対し、日は昇りも沈みもしない。
だから、人間が「夜粒」を使って「朝」と「夜」を創るのだ。
主人公コヒナタは3年前から「夜」を管理する機関に勤めている。
毎日必ず同じ時間に同じルートを走り続ける生物、ジカン。
コヒナタが仕事に手間取る日に現れる、黒ずくめの「人夜」。
時代遅れな巨体マシンによって管理され増殖する「夜粒」。
そして100年後の未来に語り継がれる、朝と夜の誕生秘話。
のんびりとしたコヒナタの恋を見守りながら楽しむ、
すこしふしぎですこしファンタジーな物語の行方。
ジカンが来たら、私まで何だか嬉しくなった。
飄々としたミナトとお酒飲んだら楽しそうだな。
朝と夜の無い星で公務員として働くコヒナタくん。
この話の中には、そんな彼の仕事や恋模様が描かれています。
コヒナタくんが暮らす様子や彼をとりまく人間関係、それらが丁寧に、しかしクドくない程度に描写されることで、読者は物語の世界にすんなりと入り込むことが出来ます。きっとあるよ、この星。きっと生きてるよ、この人たち。そう思わせてしまうほど、しっかりとした作り込みがされているのです。話を読んでいる中頃にはもう、この世界のことを大好きになっているはずです。
登場人物全員(登場"生"物含む)にもそれぞれ味があり、個人的な感想ではありますが、苦手な人が一人も出てきませんでした。一番好きになった人を選ぼうと思いましたが、いや、選べませんね。
明日を歩む勇気を貰える作品です。
忙しい日々から少し逃れて、この世界に浸っていきませんか?
八艘飛びで飛んできました。
凄いですこの作品。
一昔前に父や祖父の書棚で読んだようなSFの空気を色濃く残しております。
まさか! このカクヨムという環境でまさか! まさか! こんなクラシカルなSFに出会えるなどと思っておりませんでした。
私は砂漠で薔薇を見つけたような、何気なく入ったラーメン屋で神がかった味わいの塩ラーメンに出会ったような、ある種の得難い感動に襲われ「ふふ、最初はgoodにトドメておいて最後まで見たらexcellentにしよう」という計算を投げ捨て思わずのっけからexcellentにしてしまいました。
皆さんすぐに読んでください。本物のSFです。