禍水（まがみず）

ダムの底に沈む運命にある、山間の寂れた廃村「水楢村（みずならむら）」。都市開発コンサルタントの青年・高遠（たかとお）は、最終調査のために村を訪れる。そこで彼は、村に古くから伝わる「禍水（まがみず）」と呼ばれる湧き水と、それを祀る奇妙な風習の痕跡を見つける。村の最後の住人である老人から、その水に纏わる不吉な伝承――水に「良くないもの」を流し、村の穢れを払っていたという話を聞かされる。近代化の波と共に忘れ去られたその風習。しかし、ダムの水が満ち、村が水底に姿を消そうとするとき、水は忘れられた記憶を呼び覚まし、澱んだ水底から「何か」が浮かび上がってくる。