男は傷付いて海に来る。邂逅するは、夜光虫で彩られた海か別の何かか。ソレに魅入られた時、男もまた海を彩るのだろう。とても、美しく……。
この猛暑が続く夏はやはりホラーで涼みたい。そんな時には遠部様のホラー作品がとても心地いいです。とんでもないことをしでかした男の前に突如として現れたのは……ある種の美しさも感じてしまう、不思議な読後感のあるホラー作品です☆
ソレは輝かしく現れソレは艶めかしく美しいソレは伝説ソレは人を喰らうのか、人に食われるか陸の頂点が人間ならば、海や空に君臨する存在は……
己ばかりが正義であり、悪人が美味であり、嘘偽りが世界の装飾のように思えるなら、そこは、きらきらしい極楽。視点を変えれば、こちらは至福の極楽小説になります。視点を変えたあなたは、世界にとっては1人の地獄となるかもしれませんが。
独特の世界を筆者さまの圧倒的な表現力で書き上げた物語です。 ひとつの存在に対する執着というものは、それ自体が黒い世界を生み出す事がある。そんな現実を突き付けられたと思いきや、やがてお話はじょじょに幻想と暗がりの生み出した混沌の中へと進んでゆきます。 様々な角度から捉えることの出来るこの物語の行き着く先は一体?是非お勧め致します。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(185文字)
海辺の幻想と狂気が溶け合う、圧倒的な筆致に引き込まれました。なんて美しく怖くて暗いのかしら……。日常から非日常へと滑り落ちていく語り手の独白が不穏、読者の「これはどうなるのか?」と感情を、ざらりと撫でられるような感覚。とくに夜の海と“彼女”の描写は詩的で、静謐な恐ろしさに満ちていました。圧巻の読後感です。
これは、反転と魅了の物語です。語り手の始めた話は、途中で変化します。そこで読む者は理解するでしょう。彼が、どんな人物かを。物語が進み、彼が出逢う奇異な存在。その外見のあり様は、陽が落ちるとともに変わります。変わって見えます。あたかも、陽の下では赤潮と呼ばれるものが、夜には夜光虫と称されるように。語り手が、会社で興味を持った対象に〝したこと〟そして、出会った何かに気を惹かれて〝されたこと〟────散りばめられたメタファーが幻想の恐怖へと誘う。夜の海の怪奇譚です。どうぞ、ご堪能くださいますように。
恐怖を感じました。美しいゆえに、怖いですねえ。でも、その背筋の凍るようなこの短編は、間違いなく、傑作でした。
描写が素晴らしく良く書かれていて早い段階で物語に引き込まれました。展開も素晴らしく、後半はまさに魅せられました。
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