概要
しかし、十歳の時に両親が逝去。後に後見人となった叔母夫婦に旅籠を乗っ取られ、屋敷の奥に押し込まれて暮らす日々。
唯一の救いは、盲目の椿の話し相手として拾われた幼馴染の鈴だけ。
その鈴と、慎ましく、静かに暮らしていたが、叔母夫婦が椿を刀根田村へと売ろうと画策する話を偶然耳にする。
建前上は村長の養女だったが、実際は生贄。
椿はそうと知りながらも、鈴に別れを告げ刀根田村へと向かうことにする。そうすることで、自分に縛り付けていた鈴と決別するためだった。
椿は刀根田村へ。
そこで、椿は神の花嫁となる。
神がいるという蔵。
完全に閉じられた世界となった真っ暗闇のそこで、椿は朧と名乗る男と出会う。
二人は暗闇の中、約束を交わす。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!見えないからこそ鮮明に描き出される、二人の世界
盲目の生贄、椿。闇を抱えた神、朧。
二人が出会うのは、因習村じみた人里の真っ暗な蔵の中……。
物語は、盲目のヒロイン椿の視点で始まります。
目に映る情報がない中で、どうやってお話が進むのだろう?
冒頭から、とても興味をひかれました。
期待に胸を膨らませて読み進めていくと……こ、これは!!
椿は目が見えません。
だから、二人が互いを知り合っていくためには、指先の感覚や寄り添う体温、息遣いなど、視覚以外の情報が必要です。
その一つ一つの描写が美しく、大変色っぽい。
見えないからこその艶めかしさがあり、むしろ映像が鮮明に浮かび上がってくるようで、読みながらドキドキしてしまいました。
そして、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生きることを諦めていた盲目の生贄少女が八千矛神と出会い、世界を観る
独自の風習がある村。生贄として喰われるためにその村が祀る神の蔵に訪れた主人公の椿は、神として祀られている男・朧と出会います。
(この朧が、話し方や所作に色気があってまたいいんだ……!! この作者さまが書くヒーローは毎度雅な雰囲気と男らしい色気を併せ持っていてドキドキします。惚れます……)
朧は、椿にある取引を持ち込みます。朧の目的は、蔵から出ること。
序盤から驚きの展開が続き、ぐっと物語に引き込まれました。この二人はどうなるのだろう、とドキドキハラハラしながら読むことができます。
読んでいて情景が目に浮かぶ描写力や、ほの暗く、少し怖い雰囲気(ホラーっぽい雰囲気)も魅力です。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!神の花嫁として真っ暗な蔵の中へ。そこで出会ったものは……
椿は盲目。叔母夫婦に売られて、桃源郷と呼ばれるほどに豊かな刀根田村へとやってきた。
神の花嫁となるために。
けれど、神の花嫁というには怪しいところがたくさん。
三重もの頑丈な鍵がかかっている蔵は、まるで出してはいけないものを閉じ込めているかのよう。
真っ暗な蔵の中で、椿は神様に出会います。
特筆すべきは、目が見えない椿の描写。音や香りで感じとる様が繊細に書かれていますが、神である朧と触れ合うシーンはうっとりするほどに色気があります。
契約結婚から芽生えた愛という恋愛作品ではあるのですが、神の花嫁という名の生贄である因習や、朧が蔵にいることになった恐ろしい秘密。
さらには大雪が降った日のお…続きを読む - ★★★ Excellent!!!暗闇の中で手を引くのはあなた
目の見えない椿は業突く張りな叔母夫婦の画策により、神の花嫁として生贄として捧げられてしまう。
その神様がいるのは真っ暗な蔵。
人間なら誰しも畏れる暗闇も椿には慣れ親しんだもの。
その暗闇の中で、朧と名乗る異形と契約を交わしていきます。
閉じ込められ、光を奪われ、望みを捨てて生きてきた椿と朧。
同じ孤独を持つ二人の恋は、話し合うごとに、触れ合うごとに形作られていきます。
暗闇の中の一筋の光のような想いは熱量になり、死を受け入れていた椿の行動も徐々に変化していきます。
扉を開けて、光を取り戻す椿の心情変化が愛おしく。
また、ヒーローの朧は妖しい魅力にあふれていて色気たっぷり。
そんな朧との恋模…続きを読む - ★★★ Excellent!!!盲目の贄嫁は暗闇から出でて――眩い。
盲目であっても旅籠の主人の娘として椿は平穏に暮らしていた。
ところが、叔父夫婦に乗っ取られ、その立場はみるみる悪くなる。
挙げ句の果てに刀根田村の村長へ養女に出され、神の花嫁という因習にならい蔵に入れられてしまう。
その真っ暗闇の中で椿は、朧と名乗った男と出会った。
目の見えない椿視点で描かれるのは、匂いや感触。
世界観に没頭できるのは、視界情報だけではないのだ、と改めて感動する。
やがて椿の目の前に開いていく世界も、鮮やかに映る。
見えているのが当たり前、という感覚では出会えないものが、そこにある。
椿を伴侶に選んだ朧も、自分という存在に引け目を感じつつ、椿をかけがえのない存在だと思わせ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!愛を知った二人が、とても美しい。
生まれつき目が見えない椿。彼女に対しての扱いは一人を除いてあまりにも酷く、まるで厄介払いのように生贄という名の神の花嫁として選ばれてしまいました。
椿も抵抗することなく神がいるという蔵に閉じ込められますが、そこで朧と名乗る男性に出会います。
この人は、どんな姿をしているのだろう。
話して、触れて。少しずつ、朧を理解していく。
見えていなくてもそうして過ごした月日が確実に二人の距離を縮めていて、気が付けば互いの心にいるのですが……この描写がとても丁寧に描かれていて、儚さとあたたかさを同時に感じられます。
何より、美しいです。
椿と朧の二人を形作る文章に、表現。それがあまりにも綺麗で、二人の…続きを読む