盲目の生贄、椿。闇を抱えた神、朧。
二人が出会うのは、因習村じみた人里の真っ暗な蔵の中……。
物語は、盲目のヒロイン椿の視点で始まります。
目に映る情報がない中で、どうやってお話が進むのだろう?
冒頭から、とても興味をひかれました。
期待に胸を膨らませて読み進めていくと……こ、これは!!
椿は目が見えません。
だから、二人が互いを知り合っていくためには、指先の感覚や寄り添う体温、息遣いなど、視覚以外の情報が必要です。
その一つ一つの描写が美しく、大変色っぽい。
見えないからこその艶めかしさがあり、むしろ映像が鮮明に浮かび上がってくるようで、読みながらドキドキしてしまいました。
そして、妖艶さの間に見え隠れするホラー描写も癖になる……!
また、椿と朧の関係性も尊いのです。
境遇のせいもあり、どこか陰のある二人ですが、互いに影響を与え合い未来に前向きになっていく過程に、胸がきゅんとします。
描写と題材とキャラクター性と……様々な要素が折り重なり生み出された唯一無二の空気にどっぷり浸ってしまう。
作品全体を包む雰囲気が、とにかく魅力的な作品です!
独自の風習がある村。生贄として喰われるためにその村が祀る神の蔵に訪れた主人公の椿は、神として祀られている男・朧と出会います。
(この朧が、話し方や所作に色気があってまたいいんだ……!! この作者さまが書くヒーローは毎度雅な雰囲気と男らしい色気を併せ持っていてドキドキします。惚れます……)
朧は、椿にある取引を持ち込みます。朧の目的は、蔵から出ること。
序盤から驚きの展開が続き、ぐっと物語に引き込まれました。この二人はどうなるのだろう、とドキドキハラハラしながら読むことができます。
読んでいて情景が目に浮かぶ描写力や、ほの暗く、少し怖い雰囲気(ホラーっぽい雰囲気)も魅力です。
そして、不幸が重なり、生贄となる運命を受け入れていた主人公の心境にも、物語が進むごとに変化があります。ずっと椿を見守るような気持ちだったので、最後はよかったね……(;_;)♡と胸がいっぱいになりました。
和風な世界観にどっぷり浸かりたい人にもおすすめです! ぜひ読んでください!
椿は盲目。叔母夫婦に売られて、桃源郷と呼ばれるほどに豊かな刀根田村へとやってきた。
神の花嫁となるために。
けれど、神の花嫁というには怪しいところがたくさん。
三重もの頑丈な鍵がかかっている蔵は、まるで出してはいけないものを閉じ込めているかのよう。
真っ暗な蔵の中で、椿は神様に出会います。
特筆すべきは、目が見えない椿の描写。音や香りで感じとる様が繊細に書かれていますが、神である朧と触れ合うシーンはうっとりするほどに色気があります。
契約結婚から芽生えた愛という恋愛作品ではあるのですが、神の花嫁という名の生贄である因習や、朧が蔵にいることになった恐ろしい秘密。
さらには大雪が降った日のおかしな声など、ホラー風味もあり、読み応え抜群です。
誰もが幸せに生きたいと願っている。けれど、他者を犠牲にした上での幸福は続かない。因果応報を感じさせる作品です。
目の見えない椿は業突く張りな叔母夫婦の画策により、神の花嫁として生贄として捧げられてしまう。
その神様がいるのは真っ暗な蔵。
人間なら誰しも畏れる暗闇も椿には慣れ親しんだもの。
その暗闇の中で、朧と名乗る異形と契約を交わしていきます。
閉じ込められ、光を奪われ、望みを捨てて生きてきた椿と朧。
同じ孤独を持つ二人の恋は、話し合うごとに、触れ合うごとに形作られていきます。
暗闇の中の一筋の光のような想いは熱量になり、死を受け入れていた椿の行動も徐々に変化していきます。
扉を開けて、光を取り戻す椿の心情変化が愛おしく。
また、ヒーローの朧は妖しい魅力にあふれていて色気たっぷり。
そんな朧との恋模様をどきどきしながら楽しめるのと同時に、ホラーが得意な作者様らしいぞくっとくる展開もいいスパイスに。
妖しくも美しい、暗闇から浮かび上がるような異類婚姻譚、おすすめです!
盲目であっても旅籠の主人の娘として椿は平穏に暮らしていた。
ところが、叔父夫婦に乗っ取られ、その立場はみるみる悪くなる。
挙げ句の果てに刀根田村の村長へ養女に出され、神の花嫁という因習にならい蔵に入れられてしまう。
その真っ暗闇の中で椿は、朧と名乗った男と出会った。
目の見えない椿視点で描かれるのは、匂いや感触。
世界観に没頭できるのは、視界情報だけではないのだ、と改めて感動する。
やがて椿の目の前に開いていく世界も、鮮やかに映る。
見えているのが当たり前、という感覚では出会えないものが、そこにある。
椿を伴侶に選んだ朧も、自分という存在に引け目を感じつつ、椿をかけがえのない存在だと思わせる仕草や言葉が、静かな溺愛を読者に見せつけてくれる。
二人の婚姻譚の行く末をぜひ、見守ってください。
おすすめですよ!!
生まれつき目が見えない椿。彼女に対しての扱いは一人を除いてあまりにも酷く、まるで厄介払いのように生贄という名の神の花嫁として選ばれてしまいました。
椿も抵抗することなく神がいるという蔵に閉じ込められますが、そこで朧と名乗る男性に出会います。
この人は、どんな姿をしているのだろう。
話して、触れて。少しずつ、朧を理解していく。
見えていなくてもそうして過ごした月日が確実に二人の距離を縮めていて、気が付けば互いの心にいるのですが……この描写がとても丁寧に描かれていて、儚さとあたたかさを同時に感じられます。
何より、美しいです。
椿と朧の二人を形作る文章に、表現。それがあまりにも綺麗で、二人の関係性そのもののように思えました。
これから、二人は何処へ行くのか。
幸せになってほしいと絶対に願いたくなる、そんなお話です。
皆様もぜひ、読んでみてください。