東京都N区立T小学校3年2組の家庭訪問記録

　この怖さ、所謂「おどろおどろしい物語」としての恐怖というよりは、日常から半歩ずれたような歪で何とも言えない居心地の悪さでは……と、お伝えすればいいでしょうか。

　コメディ要素を感じつつも、こんなに怖いことってあります⁉

　退屈な日常も、こちらを読めばがらりと変わってみえるかもしれません。

記録された２１人の生徒。その家庭。
ぜんぶ、様子がおかしい。

でもなにより、その状況で〝家庭訪問〟と称する奇行を継続する〝宮崎ほのか〟という人物。彼女が常軌を逸している。

東京都N区立T小学校の生徒の家々を訪ねた彼女が、家人と話した記録集。
それが本作である。

記された事柄のなかには奇行と超常現象、異常な存在が見受けられる。
怖いだけでなく、あり得ない事態に笑いも起きる。
それもまた作者の思惑のままに。

抑制の効いた極上の怪記談。
奇態な記録を辿り、読み解く。
そして生まれる感情は────

怖くて笑えて、怖い。

文字の羅列から様々な憶測を呼ぶこの
モキュメンタリーは、今迄に類を見ない
『仕掛け』を内包している。
一つずつの章が、生徒の家庭を訪問した
記録であるのだが…。

　何かが、おかしい。

その違和感は、些少なものからあり得ない
様なものまで大小様々に散りばめられて、
ややもすると、気付かずに読み進めて
しまうかも知れない。
　或いは、ツッコミを入れつつコメディの
如き感覚で読んで行くのかも知れないが。

　だが、いつしか違和感は異物感となり、
恐怖の棘となる。

恐怖という棘を孕みつつ、クラス全員の家庭を訪問すると……。

　そこで初めて　本当の恐怖　を味わう。


そこに作者の真の物語を展…続きを読む

昭和・平成な時代、新年度を迎えた興奮がひと段落したところで、さて、とばかりに行われたのが家庭訪問でした。先生が家に来る！　むずむずするような気分で玄関のチャイムが鳴るのに耳を澄ませていたのを思い出します。

かたや、先生はというと、日々の業務をこなしつつ、数十人の保護者と時間調整をして家々を回るなんて、大変な仕事だったでしょう。

本作は、とある小学校に勤務する宮崎ほのか先生の家庭訪問記録。二十人ほどの児童の家にお邪魔し、（原則）保護者と語らい、記録を残しています。

二十も集まれば、いろんな家庭があります。普通の家庭なのに一本ネジが飛んでいたり。温かそうな家庭に見えてサイコぽかったり。異常…続きを読む

　いくつかモキュメンタリーの小説は読んだのですが、そのどれとも違った味わいがある作品でした。

　ある小学校に勤務している先生――宮崎ほのかが、担当しているクラスの家庭訪問をしたようで、それを記録したものがまとめられています。

　その文書のところどころに「ん？」とひっかかるところがあって、そういう違和感を抱くような部分が淡々と記述されているのが不気味です。

　どの家庭も普通の感覚からすると異常としか思えない点があり、この家で何が起こっているのか、実際に自分も訪問して確かめたい気持ちにさせられます。

　いや、でも、やっぱり怖いから確かめたくないな……。

　読み進めていくと、生徒とその家…続きを読む

筒井康隆の小説を彷彿とさせる狂いっぷり。
先生も生徒の家族も狂ってます。
怖いけど面白いと思うのは私だけでしょうか。
読んで判断して下さい。

家庭訪問の淡々とした記録に垣間見える異常。
何かが起きている。だが詳らかにはされない。
記述者である先生でさえ何かがおかしい。短い備考の中に含まれた、得体の知れない恐怖に浸れる新感覚ホラーです。

ひとりひとり、クラスの生徒のご家庭を訪問してゆく先生。
残される記録からは、簡潔ながら蠢く闇の聲と臭気がたちのぼり。
それを記してゆく先生自身の存在も、また……。

狂気の世界にどっぷり踏み込みたい方にお勧めです。

一見、穏やかな家庭訪問の記録なのですが、ところどころ目を引く仕掛けが散りばめられています。
特に【備考】欄。
特記事項のレンジが振り切れていてブッ飛んでいるのです。

相手は人間なのか？
生き物なのか？
それとも存在するものなのか？

いま流行りのモキュメンタリーホラーを別視点で捉えた先鋭的なエンターテイメント。

それにしても先生、タフすぎるぜ ( ；∀；)

　恐ろしくて面白い、新感覚のモキュメンタリーホラーです。

　学校教師である宮崎ほのかがクラスの生徒の一人一人の家を家庭訪問していきます。
　児童の名前や家族構成、学校での児童の態度など。それらを記入。

　そして最後に備考欄。その家庭で目に付いたものが記録されます。
　読む度に、「ぐはあ！」と読者は毎回やられてしまうこと不可避！

　どう見てもヤバいだろう、この家、と思わされるような展開のオンパレード。「明らかに事件が起きてる！」、「常識で説明のつかない怪現象が！」、「これ、絶対何かに呪われてる！」などなど。

　だが、先生の「スルースキル」が神クラスであるため、これらの異常現象は「備考欄…続きを読む