第11話 狩り


え、、、、、、、、、、、、、?


「ルイン、!逃げろ!」


 父が叫ぶが、、、ドドドド。流れ込んでくるのは甲冑を纏う騎士たち。あっという間に私たちを囲み、剣を抜く。


「どういうこと!?どうして騎士様が、、、?!」


 母が私を庇うように抱いて焦りながらも言う。


 コッ、コッ、靴音が鳴り1人の騎士が新たに近づいて来る。


「———彼から告発がありましてね?ここに薄汚い魔女がいるがいると、、、で、そこのお嬢さん、あなたが魔女ですかな?」


 玄関から入ってきた騎士は近所のおじさんのように言い方は柔らかく落ち着いているが私の目を覗き込むその目はまったく笑っていない。そのどろっとした視線に本能的にぎゅっと身が縮こまる。母が私を隠すように抱き込み一層その力が強くなる。


「何のことだ!?うちの子が魔女なわけがないだろうッ!」


「、、、そうですか?ですがそこのお坊ちゃんから報告がございましてな、、、。そうですよね?」


 そう言ってこの騎士はお兄ちゃんの方を見た。


「ああ、そうだ。ルインは魔術を使える。家族じゃ他には誰も使えないのにこいつ1人だけ使えるんだ。それに髪の色だってこんな黒髪見たことない。魔女の証拠だ」


 私を指さしてそう言う。意味がわからない。魔術を使えるから魔女なんておかしいし意味がわからない。


「どう言うことだ?!なんで魔術を使えるから魔女なんてことになる?!」


「親父と母さんは知らないかも知れないけど魔術ってのは人を貶めてやを混乱をもたらす魔女が使う呪いの術なんだよ。だからそれを隠すために魔術は外では使ってはならないなんて掟が作られたんだよ。もちろんルインは知ってたんだろうけどな」


 魔術については決して外の人間には言わないようにと決められていたことだ。なぜとは思わなかったけど、、、そんなことがあるわけない!


「おや?弁論はないようですね。つまり認めるということ、、、しかし魔女を庇うのは頂けない。それは神への背信行為であり罰を下さなければ、、、」


 鮮血が舞った。血が飛び、飛んできて頬を濡らし、私と母に降り注ぐ。べちゃべちゃと床に赤いシミがつき、首が転がった。


、、、

、、、、、、

、、、、、、、、、


「え?、、、」


 目の前には父の顔、それは驚愕に目が見開かれたままだった。


「おい!どう言うことだ!?殺すのは魔女だけのはずだろう?!」


「はあ、」


 その男は大きなため息を吐いて叫ぶ兄の方を見た。


「少々お静かに。言ったでしょう?魔女は駆逐しなければならない。魔女を庇う時点で同罪、ならば罰を与えなければ。こんなふうに」


 目に止まらぬ速さで剣が振らて、、、お母さんが倒れた。


「母様、、、、、、?」


「逃げて、、、ルイ、ン」


 どろっとした感触が伝わる。背中がぱっくりと割れて赤く温かいものが流れ出ている。


「お前ええええええええええええええっ!!!」


 お兄ちゃんが狂乱して突っ込んでくるが騎士の1人に床に叩きつけられ呻き声をあげて倒れた。


「クソ、は、な、、、せ」


「本当に愚かだ。だいたい助けてなんになると言うのか。ああ、もしかして自分の娘を殺した息子を親が愛してくれるとでも?それなら非常におめでたいやつだ。恨まれはするだろうが愛されることなんてないに決まっているだろうに。魔女を愛する親なんて必要ですかな?」


「お前が、、言ったん、だろ、、、魔術で操られてる、、って」


 床に押さえつけられたまま声を絞り出しているがその目は騎士の男を睨みつけている。


「ああ、確かに言ったかもしれませんな。確かそう言う魔術があるとかないとか、どっかで聞いた気がしなくもないことだ」


「は、、、?」


「いや申し訳ない。どうも年をとると物覚えが悪くてですな。まあ魔女を狩るには支障のないことです」


 兄は一瞬呆気に取られた後何かを言おうとしてその前に頭を剣の鞘で叩かれ動かなくなった。


「あとはお嬢さんだけです。ああ、安心してください。証人は大切ですからお兄さんは殺しませんよ。むしろ報奨金が出るくらいですから」


 にっこりと微笑む男は人を殺したとは思えないほどおおらかにそう言った。


「言質もとれたことですし、、、あなたは運がいい。拷問にかけられることもなくご両親と逝けるのですから」


 父と母を切った刀身には血がついている。そして剣が振り上げられ、それを呆然としたまま見上げていた。

 

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