第14話 魔女


「何してんの?」


 それは冷たく責めるような声、まったく気づかなかった。急に声をかけられたこととその人物に急速に熱くなっていた頭が冷える。


 そこに立っていたのは見慣れた老婆でありその言葉は私ではなくモニカに向けられた言葉だった。そして知り合いがいたことに驚く私は強烈な痛みを感じて吹き飛ばされた。


「カハッ、、」


冷たい目で私を一瞥すると興味がなくなったようにその視線はモニカへと向けられる。


「なんのつもり?ペラペラと喋って煽って、抵抗もせずにくたばっちゃってさ。計画忘れたの?」


「、、、、、、、、、、、、」


「なんで黙ってんの?何、あのまま死にたかったの?ペラペラと話して、殺されて断罪されたかった?かっこいいとでも思ったの?」


「答えないの?まぁいいけど。アンタが何を思ってようが私には関係ないしまったく興味ないから。でもさ、、、、、、」 


「仕事くらいはちゃんとしろよ?」


 髪を掴み上げそう言う少女の声はかなりドスが効いていて闇を感じるとともにビリビリと痺れるような感じがした。


「はぁ、プライドのない奴はこれだから嫌いなんだ。曖昧で気概もないくせにくだらないとこで変な勇気出しちゃってさ。そこの出来損ないにでも気が移ったか?ああ、こいつに任せたから出来損ないができたのか、、?まぁいいや。結局努力が無駄になって仕事が増えたってことだ。ほんとにむかつくなぁ」


 めんどくさそうに頭を抱える老婆、その姿は見知ったナタリーお婆さんにそっくりだけど声も所作も全てが違っていた。


「、、、誰?」


「ああ?あ、そうか。まだあのババアのままだっけ?」


そう言って顔の皮を捲るようにして剥いだ老婆の顔は少女のものへと変わっていた。


「この顔しわくちゃだしざらざらだし、ほんと不快だったんだよね。皮剥ぐのも楽じゃないんだからもっとまともなの用意してくれりゃいいのに」


 あっけらかんと老婆だった少女はそう言う。


「そう言う訳だからもうその名前で呼ばないでね。私は魔術教会侯爵魔導士、ルイフィン・サリー。そこの魔導士でありながら馬鹿で誇りも志しもないやつとは一緒にしないでね?出来損ないちゃん」


 なんだ?モニカの仲間、、、ではないの?いや魔術教会ってなに?疑問が頭を駆け巡る中、サリーと名乗った少女は近づいてくる。


「かわいそうだねえ。あの馬鹿がペラペラ喋るから君は殺されちゃうんだ。まあ、目の前で親を殺されてもただつったってることしかできない臆病者はいらないけど。でも安心して。時間がないから手間はかけないよ、一瞬で殺してあげる」


「ダメだ、サリー、、、離れて、、」


 なんだ?殺されちゃうの?モニカの言ってることは本当なの?いやその前に仲間じゃなかったの?だったらなんでモニカは私を庇うの?もう何が正しいのかわかんない。どうすればいいの?それ以前に何かできるの?


「さようなら」


 杖を向けてそう呟やき、閃光が瞬いた。


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