第13話 真相

「待って、、、!」


「、、、え?」


 なんとか間に合った。まさか足場が崩れて落ちてしまうとは思わなかった。


 ルインが咄嗟に掴んでくれなきゃきっと死んでた。なんとか足から落ちたけど気を失ってしまった。


「なんで止めるの?、、、」


 顔に落ちてくるなにかを感じて目が覚めたが危機一髪だった。目の前には涙を流して自分の首を掴む少女がいる。その上かなり強く掴んでいる上にその力は今も少しも緩んでいない。その華奢な手のどこにそんな力があるのかわからないがあと一歩遅かったら自分で首ごと折ってしまってもおかしくなかった。


「離してよ、、、。私は魔女、魔女はいなくならなきゃいけないんだよ、」


 それだけで状況を理解できた。自己催眠に陥ってる。それもかなり悪い方向かつ重度だ。


もともと魔女狩りの被害者には多い症状だし何度も見てきた。魔女の疑いをかけられた者は最初は否定するが周りは魔女というだけで後ろ指を指して罵るし危害を加える。


 場合によっては身内だって見放すことも少なくないし恥として扱われる。もちろん友人もだ。そしてその身内も魔女狩りで殺される場合も多い。そんな状況でもし庇ってくれた人がいたとして殺されたとなればどうなるだろうか?


 かつ今回はかなり無差別だ。街の人も多くが捕らえられ殺されている。そうなれば自責の念がどれだけ大きくなるか。そこに拷問や魔女裁判が加われば大抵の人は耐えられない。もちろんそこでも自分は魔女だと言われ続けるのだ。


 自己を肯定するものがなくなった上で周りの人間に魔女と言われ魔女でないことを証明できるのは自分だけ。


 だいたいは自分が魔女だと本人が信じてしまう。そして本人が認めたなら周りが疑うことないだろうし不満の吐口にして処刑。教会はよくここまで合理的で悪烈な仕組みを作ったもんだと感心できるくらいだ。


 とにかく目を覚ませさせなければならない。


「話を聞いて、、、あなたは魔女じゃない。あなたも騙されているの、、、魔女に」



「、、、え?」


 彼女の首を絞める手が緩んだ。今回は不運が重なったせいで自分で自分の首を絞めるくらいには自分を追い詰めて強力な自己催眠状態になっている。


 それだけ魔女が憎く自分が許せないんだろう。でもきっと彼女はまだ救いを求めてるんだ。ならば、、、


「あなたも魔女に騙されて魔女だと思いこまされているの」


「、、、、、、、、、」


「その魔女はね、あなたが生まれる前からここにいて、その魔術で人々を抱き込みながら魔術を広めていった。もちろんバレたらこうなることだってわかっていてやったんだ。そうやって騙して信頼を得た。そうすれば教会と戦う時に戦力になるでしょ?」


「それにもし魔女狩りにあっても生き残ったらきっとその人は教会を恨む。その人は騎士を殺して戦ってくれる。さすがにここまで徹底的にやられたのは予想外だけど、まあまた別の村なり街に行って同じことをすればいい」


「、、、、、、その魔女は、、、、、、」




だよ、」


 この子の魔女に対する恨みを利用すればいい。

 


「、うそだ、、、。」


 絞り出した声だった。


「モニカがそんなことするわけない。理由がない、、、それになんで、私たちがなにかしたの?なんで、、、、どうしてここで——」


「言ってるじゃん。戦力が欲しかったんだよ。ここにきたのは偶然、」


 彼女は呆然としたように固まっている。魔女というものを信じて魔女を憎んでいる彼女にはよく効くだろう。


 それにこれは嘘じゃない。本当はもう少し曖昧で魔法の保存とか使い手の選別とかいろいろあるけど腹黒い上の奴らの腹の中を覗けばこれくらいは考えているだろう。


 自分で言っていて薄ら寒さを感じるくらいには卑劣で悪烈だと思う。でもバレることは想定してたわけじゃない。バレないように村の人には外に話さないように誘導していたしちゃんとチェックもしていた。


 ルインの兄は彼から何回か話を聞いた時に少し危ないとは思っていたからできるだけフォローはしていたつもりだった。


 それでもまさかそんなに拗れていたとは思わなかったし教会と接触するのも早すぎた。私たちと同じように教会の関係者が忍び込んでいたのかもしれない。いずれにしても私の落ち度だ。


「、、、、、、嘘だ、、、そんなわけないッ!モニカはみんなに優しかった!頼りになる人だったッ!困った時は助けてくれて、悩んでいる時は話を聞いてくれた!」


 その信頼を裏切るのが辛い。


「演技だよ。本気にしちゃった?」


「命懸けで私を助けてくれたッ!、、、」


「言ったでしょ、大切な戦力なんだよ。それに勝算があった。こう見えても僕強いんだよ?良い子の生徒のふりして隠してただけから」


「、、、、、、、、、モニカはそんな酷い人じゃない、、、、、、、」


「感情論?もはや根拠の一つもない、著しく信憑性に欠ける。君が殺すべきは僕だよ」


 彼女の震える手で僕の喉を掴ませる。そこには怒りと悔しさと悲しみが混ざったとような表情、散々情緒をかき乱されて、、、僕は酷いやつだ。


 涙が落ちてくる。その表情は昔の僕にそっくりで、、、、、、、、、、






「何やってんの?」

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